Interview with Setter and The Teammates

a2510008635_10

Setter(Soundcloud)という日本の若き宅録ミュージシャンの楽曲にずっとぼくが覚えていた親近感の正体。それは90年代のUSインディーや、インタビューでも触れられているが彼に多大なる影響を与えたスピッツから出発して、60’sや70’sのソングライターを熱心に掘り当てて、そこで得たものを自身の音楽へ投影する、その方法論の部分への共感なのだと、彼がSoundcloudにアップしてきたデモ音源を聴いているときにはそう思っていた。Setter & The Teammates名義で発表された彼にとっての1stアルバムとなる本作『Setter & The Teammates』に収録されている”あたまからはなれない”で神経症気味に響きわたるマッドなオーケストレーションやBB5的なコーラス・ワーク、”旅”のギターソロで剥き出しになるGalaxie 500への盲目的な愛、または”スロウダウン”、”9月の人”などの楽曲に顕著な現行のベッドルーム・ポップ的なサウンド・プロダクション。それらはぼくの音楽的嗜好にとても合うものだから。しかし、彼の1stアルバム『Setter & The Teammates』を繰り返し聴いていくうちにこの「親近感」がまったく別のところから来ていることにぼくは気がついた。孤独であるということ、彼がそのことにしっかりと向き合って音楽を制作しているということ。日常のなかで両手いっぱいにタスクを抱えて疲弊して、それでも音楽を希求する心を大切にするということ。これだ。昨年の夏にぼくは彼にSoundcloudからコンタクトをとって、アルバムがリリースになったときのインタビューを打診した。そしてこのインタビューは昨年12月にSoundcloudのメッセージを使って半月くらいの時間をかけて行われたもので、ぼくにとっては刺激的であると同時に古い友人との往復書簡のような安心感すらもたらしてくれるものであった。公開になったばかりのアルバムを聴くうえでのサブテキストとして、このインタビューを楽しんでいただけたらと思う。(文責:古川敏彦)

―郷愁の逆バージョン

Setterさんのことを知らない、これから知るという人も多いと思いますので、これまでの経歴を教えてください。

「静岡で生まれて高校まで過ごし、大学は東京に出て4年間多摩で暮らして、就職と同時に地元に戻り今年で3年目です。音楽は昔から好きでしたが、バンドをを始めたのは大学からで、就職と同時に宅録を始めたという感じです」

・大学生のときにやっていたバンドというのはオリジナルをやってらっしゃったんですか?また、その当時の担当楽器はなんでしたか?というのも、Setterさんの音楽からもともとはバンド指向の方なんだろうなあ、っていうのは想像していたんですが、マルチタレントな方でしょうし、担当パートがわからないなあと(笑)

「大学時代はほとんどコピーバンドでした。軽音楽サークルに入っていて、サークル内でライブ毎にメンバーを替えてビートルズとか、色々コピーしていました。オリジナルも少しだけやりましたが、一度ライブをしただけで終わってしまいました(笑)担当楽器はベースで、ごく稀にトランペットでもライブに出たりしましたが、毎度めちゃくちゃにミスって終わりました(笑)マルチなんてものではなくて、色々手を出しすぎて全部下手で(笑)」

・フリーキーなというか、DIYというかローファイというか・・・(笑) では、就職のタイミングで他のメンバーと離れたことから宅録に表現衝動の出口を求めたという感じですか?ちなみに、当時バンドを一緒に組んでいた他のメンバーの方々にはいまのSetterさんの音楽って聴かせましたか?どのような反応が返ってきましたか?

「元々出来ないことでもDIYしてしまっているので、結果的にローファイになっていますね(笑)就職で他のメンバーと離れたわけではなく、オリジナルバンドは大学2年生までしか活動しておらず、後はコピーバンドしかしていませんでした。オリジナルをやりたいと思っていましたが、自分の技量に自信が無くて自分からは声がかけられず(笑) 結局できないまま就職しました。そんな中友人たちがインディーズデビューしたりしていって(まだ知名度は低いですが東京インディーの〇〇〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇〇〇〇というバンドです。)やっぱり自分も何か作りたいと思い、一人で始めました。かつてのメンバーは1人だけ(リードギター担当)聞いてもらいました。アレンジ面で評価してくれて、入っているギター他のフレーズ、アイデアについて褒めてもらえたので嬉しかったです(笑)」(編注:ここで名前の挙がったバンド名についてはこちらの判断で伏せさせていただいています)

・そういったご友人の方々のご活躍に刺激を受けるというのは当然あったかと思うんですけど、音楽的に影響を受けたりというのはありますか?

「音楽的な影響は自分としてはあまり受けていないかなと思うのですが、やはり友人の作っている曲はよくきくので、気づいていないだけでもしかしたら影響受けている部分もあるんですかね、、、」

・アルバムの制作にはどれくらいかかっているのでしょうか?結構な時間かけてますよね?夏にデモがサンクラにアップされて、そこからマスタリングのみで半年くらい?ですか。

「アルバムに入っている曲で一番古いのが2曲目の”あたまからはなれない”で、一昨年の10月とかに出来た(その後何度も手直ししていますが)と思うので丸2年くらいです。夏にデモをアップしてから、”アパート”と”昼間の雰囲気”の二曲を作っていて、出来たのが10月初めくらいで、マスタリングの期間は2ヶ月くらいです(実はまだ今も、ジャケット選びと平行して、小さいところを手直ししています。もう少し曲毎の音圧をそろえたいと思いまして)」

・Setterさんの音楽ってすごくプライベートなものだと思うんですよ。Setterさん自身がご自分と対話しているような音楽というか。このインタビューに入る前の話で出た通勤時間っていうのもキーワードとしてそこに繋がるものですし、アルバムの構成が旅に出て部屋に帰ってひとりになって、というものになっているのが印象的なのでそう思うのかも知れませんが。そういう私的な表現であることってご自身で意識されていたりしますか?

「歌詞に目を向けて頂けているのが大変嬉しいです。私的な表現というのは、滲み出てしまうところが多いです(笑)が、意図している部分もあります。僕はメロディーから先に作ることが多いのですが、はじめテキトーに歌っているうちに、なんとなく気に入るフレーズが出てきて、そういうなんとなく出てくるフレーズって大抵身近な内容なんです。そういう一文から膨らませていって一曲の歌詞を作るという流れが多いので、自然とプライベートな内容になってしまうのかもしれません。あとは、今の仕事や環境に対するコンプレックスが考えられます。これは意図している部分も多いのですが。僕は今大卒三年目で、大学入学時に上京して四年間を多摩で過ごし、その後地元に戻って地元企業に勤めています。大学の頃の友人の殆どが東京に残ってバンド活動をしたり、誰かの来日ライブに平日に行ったりしている中、自分は一人で片道2時間弱の通勤をして、残業をして帰ってきたりしていて。友人たちが羨ましいのもあるし、そう思うのが情けなかったり、悔しかったり寂しかったりして(笑)そういうところの不満を静かに爆発させています(笑)この不満というのは、宅録をする上で結構な原動力であったりするかもしれません。それから、音源を作り始めたきっかけに、『自分が死んだ後も残るものを何かしらの形で残したい』という気持ちもありました」

・アルバムを聴いているとSetterさんはどこか居心地が悪そうで、表面的にはメジャーキーで明るい曲でも憂いを帯びている気がして、そういうのはやっぱりSetterさんが置かれている環境であるとか、音楽の現場に身を投じたいのにできない、ということから来る部分っていうのは大きいんでしょうね。その、抑制しきれなかった感情の「爆発」が一番音に出ているのが、アルバムのなかで個人的に大好きな曲なんですけど、”旅”のギターソロなのではないかと。アルバムでも鍵になる曲だと思いますけれども、”旅”という曲の背景や、成り立ちについてお教えください。

「前向きな歌詞を書いたりしましたが、歌ってみると身近じゃないので恥ずかしくなってやめました(笑)あと、曲と歌詞、アレンジを通して、ポップすぎないようにしようとは心掛けています。”旅”、気に入って頂けて嬉しいです。確かにこのアルバムは”旅”から雰囲気が変わるかもしれません。”旅”の成り立ちについて覚えている限りで、、、作ったのは去年の6月です。その時僕はちょっとした外科手術で10日ほど入院していました(笑)食事もだめ、もちろん楽器は弾けない環境でとても暇で(笑)その時に頭の中で、コードからアレンジまでだいたい完成した曲です。有給を使ってしまいお盆休みがなくなり、その前の夏は伊豆でキャンプしたのに、そういうことが出来なくなって、不満は爆発していたかもしれません(笑)なんとなく『伊豆の踊り子』を読んでみたり、そういう中で曲が出来ました。めちゃくちゃ旅行に行きたかったです(笑)」

・僕は三鷹出身なんですけれども、「多摩」っていうキーワードにまたピンとくるものがありまして笑 多摩地区って都内でも独自の文化圏を生成していると思うんですよ。音楽だけをとっても、品揃えの変わったレコード屋さんがあったり、ライブハウスが土地に根差していて。そういう多摩地区で生活していたことっていうのはSetterさんの音楽に反映されていると思いますか?また、この場所で生活している・していたからこそこういう音楽性になった、というような想いの深い場所ってありますか?

「多摩のレコードショップとかライブハウス行ったことが無いです、今度教えてください、、、でも、多摩に住んでいたことは結構大きかったと思います。徒歩圏内にあったブックオフも品揃えが良くて重宝しましたし、他にもリサイクルショップが沢山あってよく通いました。元々中古があまり得意ではなかったのですが、多摩にいたおかげでリサイクルショップが大好きになり、何かと幅が広がったかもしれません(笑)多摩は東京なのに比較的静かで、ニュータウンのマンションや団地の雰囲気も良かったです。比較的新しいマンションが多いのに閑散としていて少し寂しい感じがするのも良かったです。元々一人でいるのは苦にならない方なので居心地が良かったかもしれません。思い出深い場所は、一人暮らししていた部屋ですかね(インドアですみません)大学に近かったこともあり色々な人が遊びにきて、YouTubeでお気に入りの曲を教え合ったり、曲を作ったり、鍋をしたり、多摩で過ごした大学生活はとても充実していたなと思います。最初は人を家に呼ぶのが嫌で、ちょっと人見知りっぽいところもあったのですが、少しは社交的になれたかなと思います。そんな居心地が良かった場所を出て今地元に帰ってきているから、今のアルバムがあるのかもしれません。郷愁の逆バージョンですね(笑)」

・地域性のことをお聞きしたのって、音楽、とくにオルタナティブなロックを聴いてこれはアメリカっぽい、これはイギリスっぽい、って感覚的に捉えるみたいなのって割と音楽リスナーの多くの人がやることだと思うんですけど、Setterさんの音楽からはぱっとそれが浮かばなかったんですね。なにかそういうバックグラウンド的なものがあるのではないか、と深読みしまして(笑)音楽的にはどうですか?これまでどういう音楽を聴いてきて、どのような盤に影響を受けてきましたか?60’sのソングライターがお好きなんだろうなというのはすごく伝わるんですけれども。

「その感覚分かります!恐らく(今も)都心に住んでいたら、このアルバムは出来ていなかっただろうとはよく思います。僕は元々スピッツばかり聴いていて、ファンクラブにも入るくらいでした(笑 )勿論60’sのバンドは大好きです。70’sだと最近はELOとかよく聴きます。でも自分の曲に一番濃く反映されているのは、90’sのUSインディーかもしれません。特に、60’sの音楽を再現しようとしたElephant6という集団のバンドが大好きで、Olivia Tremor Controlの『Bleck Foliage』の中には、自分の曲で一部真似しちゃってる曲もあります(笑)」

FH000003

―音源に対して命かけてるみたいなバンドが少なくなってしまいそうなのは残念

・『Music From the Unrealized Film Script Dusk at Cubist Castle』のLPが写り込んだ写真をサンクラのヘッダー画像に使ってますもんね。Setter & The Teammatesという名義もロジャニコみたいにしたかった、と発言されていたのでこの辺もヒントになるのかな?と思ったんですよ。ブライアン・ウィルソンやヴァン・ダイク・パークス、カート・ベッチャーなんかの影響を受けているんだろうなというのが曲から伝わってくるんで、その「60’sの音楽を再現しようとした」っていうElephant 6がワンクッションとして入ってくるのは面白いですね!

「自分の曲からそのお三方の名前を連想して頂けるのは本当に嬉しいです。Elephant6の曲には、やり過ぎだろと思う箇所も所々ありますが(笑)、元々スピッツ等90’s以降の音楽から入っている自分にとって、60’sよりも身近に感じられるからというのもあると思います」

・90年代のUSインディーからの流れを汲むものでもあると思うんですけれども、現行のベッドルーム・ポップなんかはどうですか?今回のアルバムを聴いていて、Bandcampでローファイ、ベッドルーム・ポップ、ドリーム・ポップとかでタグ付けされているような、いまのDIYなベッドルーム・ポップと表面的に近い印象を受ける人も多いんじゃないかと思うんですよ。

「Alex GやElvis Depressedly(Coma Cinema)、Frankie Cosmos等は、ここ数年の間にかなりドハマりていた時期があるので、その辺りの影響も強いと思います。90年代になってしまいますがElliott Smithとか、自分が良いと思うものはなんでも真似してしまっていますね(笑)」

・質問が前後してしまうんですけど、Setterさんが歌詞をすごく大切にされているということはここまでの回答から伺えます。楽曲からはストレートに、Setterさんがベッドルームで淡々と毎日の出来事を見つめなおしているような内省的な姿が浮かんできます。Setterさんにとって、楽曲制作において歌詞の比重というのはどれくらいのものなのでしょうか?この辺もスピッツの影響というのは大きかったりしますか?

「想像頂いている姿そのままが僕の日常です(笑)僕はメロディーを先に作るので、メロディーに気持ちよく乗る歌詞にするというのは大前提としてあって、あとはどんな日本語、言い回しを選ぶかでかなり迷います。だらだら歌詞を作って何度も直すので、1曲で半年くらい歌詞に迷ったり(笑)それだけ気を遣っているのかもしれません。言い回しの中でスピッツ的な表現はかなり出ていると自分でも思いますし、程よい抜け感みたいなものは真似したいなと思って意識しています。スピッツの影響はかなり大きいです」

・「90年代」って単語がいまの若い方のクチから出る機会が増えてきて、自分が90年代の半ばころってNew OrderとかCureあたりから80年代どっぷりだったんで、似たようなものかなあと思いつつ(笑) Setterさんにとっての「90年代」って特別な意味を持ちますか?抽象的な質問になってしまうんですけれども」

「たしかに『90年代』は服装にしても音楽にしても再注目されている感じを受けます。『90年代』に対して特別な意味、、、僕の『90年代』は6歳の時で終わっていますしあまり考えたことがないですが、好きな音楽は90年代のものが多いですし、憧れはあるかもしれません。あと、初期スピッツ然り海外のインディーズ然り、当時のミックスは少しこもってきこえて、どこか懐かしさを覚えます」

・それから、Setterさんの制作環境や機材について教えてください。楽器や機材などにこだわりなどはありますか?

「資金的に制限もあり、今回機材等に拘っていられない状況でした(笑)録音はすべてGarageband、Voxのアンプシュミレーターを通して、パソコンで録りました。本当はスタジオで録音したかったですが、とても時間とお金の余裕が無く、半分趣味で作っているので、かなり妥協してしまっています。完成度よりも、頭の中で浮かんでいるものを早く形にしてみたいという気持ちの方が強かったです。機材は、Gtがリッケン330、ダンエレdano pro、フェンダーJテレキャス。BaがフェンダーJジャズベ、グヤトーンeb4。Keyがマイクロコルグ、カシオトーン301、ローズmk-60。アコギとガットギターは鈴木バイオリンです。マイクロコルグ以外のkeyとアコギはハードオフで5千円くらいでほぼ揃えました(笑)」

・Setterさんは現在ご自分の音楽のアウトプットとして主にSoundcloudを利用されていますよね。現在のフィジカルからストリーミングへと音楽の発表の場が移行していっている流れについて考えるところがあったりしますか?

「Soundcloudを使用したのは、手軽かつ自分の友人に使っている人が多いからというただそれだけの理由でした。僕はアルバムやシングルのジャケが好きでアナログで購入したりするので、フィジカルがなくなることは単純に寂しいという気持ちはあります。LPやCDで聴かなくなるにつれ、アルバム単位での意識が薄くなるような気がしますし、さらにはアーティスト単位での違いすら曖昧になっていきそうな気がします。音楽がタダになってしまうのは、作品に対する価値がなくなってしまう気がしてアーティスト側には残念な点が多いと思う反面、アクセスのしやすさはアーティストとリスナー両者にとってメリットがあるなとも思います。でも音楽がタダなせいで今はライブ映えするバンドが売れ線になってきていて、名前を挙げたolivia tremor controlとか、xtcとかeloみたいな、音源に対して命かけてるみたいなバンドが少なくなってしまいそうなのは個人的にとても残念です」

・アルバムもアナログ盤のA面に5曲、B面に5曲という区切りを意識して作られているんだろうなあ、というのがわかる構成になっていますよね。

「実際ぼくはApple Musicも普通に使っていて便利さを実感していますし、全てが全て悪いことではないと思っていますが(笑)A面B面の区切りは意識していたので、気づいて頂けて嬉しいです」

・Setterさんは録音メインの活動だとは思うんですけれども、ライブ活動は行っていないのでしょうか?

「ライブは全くしておらず、する予定もありません。地元に音楽の趣味が合う友達はいないですし、やるなら同じ大学だった人たちに協力してもらってやりたいと思っているので、いつか、できたらいいなとは思っています。でも僕の曲をライブでやってうまくいくのか、、、自信はあまり無いです(笑)

 

 

カテゴリー: alternative, bedroom pop, dream pop, indie pop, Interview, SSW | 1件のコメント

2017 Bandcamp Year-End List

年間ベスト、Bandcampで購入したもの限定。なるべくほかの人がセレクトしないものを選ぶということを念頭に置いて選んでみました。昨年パスつきで公開した2016年のリストはこちら(Passwordは「alabama69」です)。公開してから一度も読み直すことなく、また、ことしの夏にPC周りを新調した際にパスワードを紛失してしまい、今回のリストを作成するにあたって1年振りに読み直してみたら、まあ、僕の聴く音楽はこの1年なにも変わっていないなあと思いました。

-20 Backyard Days by Danny Blue And The Old Socks

ベルギーのインディー・ポップ・バンドのニューカマー(Facebook)。Trk-2、3、4で狂い咲くポップ・サウンドの前に膝から崩れ落ちました。この音源をリリースしたベルギーのCluster-Park(Facebook)はベルギーのポスト・パンク、エクスペリメンタルとかを中心にアーカイブしてるレーベルで、リリース量が多くてチェックし切れていないっていうのはあるんですが、個人的に今年ベルギーのlate 70’s~のへヴィ・メタルにどハマったこともあって、ベルギーっていう国への関心が急速に高まったっていうのもあり、いま注目しているレーベルのひとつです。

SpotifyApple Music

-19 Wash Me With Love MLP by Plastic Tones

フィンランドのフィメールVoの現行パンク/パワーポップ・バンド(Facebook)の1stミニアルバム。どの曲もとにかくPOPで、今年度Bandcamp上にあがった「power pop」または「powerpop」タグがつけられた作品はすべてチェックしてきましたが、そのなかでもそのポップ・センスは随一だったと思います。

(SpotifyApple Music

-18 TV Girls by Susan

サンディエゴのインディー・ポッパーの7インチ。Aサイドに収録された”TV Girls”というタイトルからしてサンディエゴ万歳、といった感じなのですが。

-17 NIGHTCRAWLER EP by The Dahmers

スウェーデンの現行パンク/パワーポップ・バンド(Facebook)。このバンドについてはことしリリースになったアルバム(Link)もよく聴いたんですが、1枚となるとこちらを。いかにもスウェーデンといった感じの、Henry Fiat’s Open Soarなんかを思い出させるような現行パワーポップ・サウンドがすごく心地いいです。このバンドをリリースしているスウェーデンのLövely Recordsはいまのスウェーデンのパンク、パワーポップ、ポスト・パンクとかの面白い音源を多数扱っているのでその辺がお好きな方はチェックしてみたらよろしいのではないかと。

SpotifyApple Music

-16 Oh, My Heart by Shannen Moser

フィラデルフィアのベッドルーム・ポップ。こちらに記事書きました。

(SpotifyApple Music

-15 Friends and Animals by Noah’s Ark

当ブログでインタビューやりました(こちら)。

(SpotifyApple Music)

-14 Beaten Down (Démo 2017) by Beaten Brats

当ブログでインタビューやりました(こちら)。

-13 S​/​T by Lamagaia

スウェーデンのドラッギーなクラウトロック/スペースロック。2曲ともに15フン超えの長尺ナンバーながら、Velvet Undergroundがクラウトロック勢に与えた最大のインフルエンスであるところのミニマリズム、反復という部分を徹底的に研究したのちにあっさりデストロイ!しようとしたような音が痛快です。名門Cardinal Fuzz(Link)からの12インチ、僕はもたもたしていて買い逃しました。。

-12 ETT – 045 – SKULL CULT – VOL​.​1 + VOL. 2 EP by SKULL CULT

ここのErste Theke Tontraegerというドイツのレーベルは昨年バズりにバズったKRIMEWATCHのデモをリリースしたり、それからことしISSの「₍Endless Pussyfooting)LP」が全世界で話題になったこともあってとても注目を浴びましたが、個人的にはこの作品にたまげました。DEVO-COREとはつけもつけたり!このDIY/ハンドメイド感のある(シンセ・)パンクは中毒性の塊です!

 

-11 ( ( ( I ‘ M H E R O I N ) ) ) full album by Mephistofeles

アルゼンチンの極悪ドゥーム・メタル集団、Mephistofeles(Facebook)は昨年のアルバム「Whore」も良かったですし、本作でも彼らのヘヴィなファズ・サウンドは一級品。B級ホラー、ポルノ、ナチスなどジャケットの悪趣味なセンスの加速っぷりも目立つ彼ら、本作をBrooklyn Veganのこちらの記事にてElectric WizardのJus Obornが今年度ベストに選出したり、デンマークのヘヴィ・ロック・レーベルCursed Tongueと契約を果たし来年の2月に本作のヴァイナル・リリースがアナウンスされたりと、非常にバンドの周辺が賑やかなことになってきました。

 

-10 Carnivores by Clan

UKはノリッチのストーナー・トリオ(Facebook)のセカンド・フルアルバム。これはよかったですね!へヴィなファズ・サウンドから時折覗くメランコリックでエモーショナルなメロディー、旋律の美しさに打ちひしがれました。ベスト・トラックはTrk-7の”True Believer”。何度聴いても鳥肌が立ちます。

(Spotify

-9 Cold Front by Freeways

ことし9月に3曲入りのシングルをセルフ・リリース、カセットはHeavy Chains Recordsから、ヴァイナルはTemple of Mystery Recordsからのリリースとなるカナダはブランプトンのニューカマー(Facebook)。中期Thin LizzyとかUFOとか直系のハードロックで、とにかく曲のクオリティーが高いです。Trk-3の華麗なギターソロに痺れまくりました。

-8 Collection LP by Rixe

14位に選出したBeaten Bratsのインタビュー内でメンバーより教わったフランスのOi!バンドの最初のEP3枚を1枚にまとめたLP。野太いVoが吐き出すフランス語のパンク・ロックの衝撃度は凄まじいものがあって、最初に聴いたときは思わず笑ってしまったほどでした。

-7 The Pact by Lucifer’s Chalice

UKのダラム出身のNWOBHM/ドゥーム・メタルのニューカマー(Facebook)。この音源は聴き倒しましたねえ!Angel WitchやWitchfinder General、Cirith Ungolのようなオカルティックな要素と、メイデン直系のドラマツルギーが彼らのへヴィ・メタルの本質です。フィジカルはShadow Kingdomより。

-6 CRACKS AND LINES by EGYPT

アメリカはノース・ダコタ州のストーナー・トリオ(Facebook)渾身のニュー・アルバム。ストイックなファズ・サウンドが最高にクールです。アルバムのタイトル曲のEasybeats”Can’t Find Love”からの引用と思しき箇所にゾクゾクしっぱなしです。

(SpotifyApple Music

 

-5 Frank Infatuation by Real Numbers

Real Numbers(Facebook)のこれまでの音源は正直そこまで好きというわけでもなかったんですけれども、この2曲の即効性には撃ち抜かれました。TVパーソナリティーズ的なDIYパンクの現代における最高峰といっていいんじゃないでしょうか。

(SpotifyApple Music

 

-4 McCallister (Single Version) by The Mells

ニューヨークはブルックリンのインディー・ポップのニューカマー(Facebook)。こちらに記事書いてます。残念なことにLiteratureが活動を停止してしまったいま、このバンドに寄せる期待というのは非常に大きいものがあります。

-3 Nite Visions “Demo” CS by The Sight

オーストラリアのBlow Bloodからカセット・リリースになったクリーブランドのロッカー、Ricky Hamilton率いるThe Sightの1stデモ。僕はリッキーの大ファンですし、彼のインタビューを2016年に当ブログでも行っていますが(Link)、本作のリリースに伴いNoiseyにてこういった記事が公開され、かつてのビリー・チャイルディッシュを彷彿させるハイペースな音源のリリース・ラッシュ、それはひとえに彼自身の「アイデアが浮かんだらバンドを結成してレコーディングをする」というスタンスによるものですが、Noiseyの記事公開以降飛躍的にリッキーや彼の主宰するQuality Time Recordsに注目する人が増えてきたのは本当に喜ばしい限りです。本作も、Trk-1″Tip of my Tongue”の、1分27秒に込められた彼らのロックへ賭ける想いに触れるたびに、僕は泣けてしまって仕方がないのです。来年も彼やクリーブランドのシーンには目が離せません。

-2 Come Play The Trees by Snapped Ankles

2年前の夏にロンドンを訪れた際、このバンドとCosmic Deadのライブのチケットを購入していたにも関わらずライブを観ることができなかった、というのはずっと後悔していることなのですが、このアルバムを聴いてより一層その思いが高まりました。。「AGRROcultural PUNKTRONICA From AnaLOGe Dendrophilia Mediators」という文句通りの一風変わった音楽ですが、シンセ・パンクとしても、またはオルタナティブなロックとしても聴けると思います。過去のシングル曲も収録した本作は彼らのこれまでの集大成的なもので、どの曲においてもミニマリスティックに塒を巻く音塊が圧巻です。

(SpotifyApple Music

-1 PANEL BEAT by Alien Nosejob

パンク・ロックの今年度最後の目玉はこれですね。オーストラリアから突如現れてヘイト・アティチュードをまき散らす素性不明の4人組の1stEPにいま現行パンク・ロックのファン(の一部)が騒然となっていて、実際この音源の訴求力というのは尋常なものではないので、最近出たばかりの音源なのですが今年度のベストに選んでしまいました!彼らのダウナーでネガティブなパンク・ロックはもう清らかささえ漂うほどで、セルフ・プロダクションでリリースとなった本作も本人たち自身はリリースしたくなかった、なんて話もありますが、本当に最高ですよ。

 

ことし、10年以上にわたって暮らしていた岡山を離れ、広島の福山に半年住んだのち神奈川は横須賀に引っ越すという、自分の人生にとって転機のような出来事がありました。半年間で3回の引っ越し、生活環境の変化・それによってもたらされるストレスに金銭的な問題によってBandcampで音源を買うことは例年に比べて非常に少なかったです。ブログ的にはことし4月に公開させていただいたNAHAVANDのインタビュー(こちら)と、ファンジンに寄稿させていただいたCharlie ‘Ungryについての記事(こちら)が、音楽を聴いて文章を書くということに携われる喜びを強く実感させてくれるもので、僕はこういうものをこれからも書いていきたいと思っています。来年は極少数ながらファンジンも制作も予定していますし、そちらのほうは読んでくださる方にフリーで配布する予定ですので、決まり次第こちらで告知させていただきますので是非!どんなときでも、音楽が心に突き刺さる瞬間、その感動やエキサイトメントを大切にして頑張っていきましょう。来年度も皆さんに素晴らしい音楽との出会いがありますように!

カテゴリー: 2017 | タグ: | コメントをどうぞ

Charlie ‘Ungry「House on Chester Road」

(以下は、先日販売されたジン「THINK-AND-GROW」に寄稿させていただいたコラムです。主宰nakamodsさんの許諾をいただいて、こちらのブログでも公開させていただく運びとなりました。)

charlieungry01

みなさん、はじめまして。僕はsittingbythechurchwithdanという音楽ブログを運営している者で、おもにBandcampに音源がアップされている現行のバンド、それはパンク、パワーポップやロックンロールだけに限らず「インディー」な音楽、のレビューをしたり、バンドやレーベルにインタビューを行ったりしています。今回、レーベルThink-And-Grow主宰、個人的にいつもお世話になっているnakamodsさんが自主企画ALL SYSTEMS NO VOL.1開催にあわせてファンジン「THINK-AND-GROW ZINE」を発刊するということで、そこにレビューやコラムを書いてみないか、というありがたいお言葉を頂戴しまして。このジンは今後もイベントのたびに発刊されるようなので、書きたいことならたくさんありますし、それでは連載の枠を設けていただいてしまおうと勝手に企んでいるわけでして。というわけで第1回となる今回はCharlie ‘Ungryというバンドについて書いてみようと思います。

まずは、昨年発刊されたへヴィ・メタル・ファンジン「粛誠心報流星弐號」に寄稿された、僕の北海道在住の友人であり、ストーナー・ロック・バンド「リフアナ」の現ベーシスト石倉昇太郎氏によるCharlie ‘Ungryのアルバム「The Chester Road Album」のレビューをここにご本人の許可を得て全文転載させていただきます。

「へヴィメタル?パンク?分類不能不要。N.W.O.B.H.M.とは趣の異なる、THE HOLLIES直系のキャッチ―で優しく切なく力強い哀愁を、グラムロック、パンク経由のブルージーなハードロックに落とし込んだ特殊性故か、時代の狭間に取り残されたバンドの音源集。全曲名曲。60’sブリティッシュビート株最後の徒花狂い咲き。2014年にRAVE UP RECORDSから12inchで再発されるも・・・・・数曲削られてます。アナログ派の方もCDは必須」

これは友人が書いたものである、という贔屓目を抜きにしてレビューの「文字数」という制約・制限のなかで、音源から受け取った熱をほかの誰かに伝えようという意欲が猛烈に込められた本当に素晴らしいレビューだと思います。このジンを石倉氏より受け取った日のまさにその晩に、最近ではPrix(Tommy Hoehn!!)やOiSTER(Pre-Dwight Twilley Band)、Razor Boysなど素晴らしい発掘音源をリリースしているアメリカのパンク・ロック・レーベルHoZacからCharlie ‘Ungryのシングル「Who is my Killer?」のリリースがアナウンスされた、というのはただの偶然だったのでしょうか?このCharlie ‘Ungryという、現役時代にはシングル1枚のみをリリースしたのみの、マニアしか見向きもしないようなバンドを再評価しようという動きが、北海道とシカゴでまるで共時性を持つかのように発生した、というのは僕にとっては驚くべきことであり、ちょっとした事件だったのです。


(左:オリジナル「House on Chester Road」シングルジャケ、右:HoZac版「Who is my Killer?」ジャケ。HoZacのセンスが光る)

Charlie ‘UngryはScruffというローカル・バンドに在籍していたSteve Protheroe(G)とAndy Demetriou(Dr)が、グラム・ロック・バンドYellow BirdのTony Sando(Vo)、Jeff Gibbs(B)と合流して77年の春にロンドンにて結成されました。結成からわずか2か月後の5月にMike Oldfieldの「Tublar Bells」のプロデュースで有名なTom Newmanの所有するスタジオArgonaut Studioにて3曲のデモを録音、そしてこのデモを聴いたTom Newman自身がプロデュースを買って出て、バンドのこの時点での全ての楽曲である12曲がレコーディングされたのが同年の8月。録音に費やされた時間はたったの2日だったとのことです。このレコーディング・セッションののちにバンドはショーケース・ギグを行いますが、どこのレーベルのA&Rも興味を示さなかったということで、失意のなかバンドは活動を停止してしまいます。それはバンド結成からわずか7ヶ月目のことでした。それから2年後、1980年にTony SandoとAndy Demetriouは自主レーベルCharlie ‘Ungryを立ち上げ、極小プレスでシングル「House on  Chester Road/Preacher/Who is my Killer?」を77年のTom Newmanとのレコーディング・セッションをもとにしてリリースします。TonyとAndyのふたりによってこのシングルはロンドンじゅうのラジオ局に送られ、バンドに目を付けたCapital RadioのDJアラン・フリーマンによって”Who is my Killer?”がパワープレイされ、シングルは2000枚を売り上げ、さらにはイギリスのインディー・チャートで17位をマークするという事態に発展するに至って、ベーシストのJeff Gibbsが復帰、ギタリストとして新たにTony Nurseを迎え入れCharlie ‘Ungryは再始動します。「House on the Chester Road」に次ぐシングルのためにバンドはスタジオに入り、新曲”Keep The Peace”と”Let it Ride”を録音(その2曲はシングルとしてリリースされることはありませんでしたが)、ロンドンを中心としてライブを行い、そのなかにはThe WhoのベーシストJohn Entwhistleのソロ・パフォーマンスのオープニング・アクトといった彼らにとっては大きな舞台でのライブもあったようですが、それでもどこのレーベルからもオファーが来ない状況に失望したバンドは解散してしまいます。現役時代には日の目を浴びることのなかった彼らの音源が世に出たのが2000年代に入ってからのことでした。ギリシャのとあるコレクターがObscure NWOBHM Recordsを立ち上げ、バンドにコンタクトをとってCharlie ‘Ungryの全音源集「The Chester Road Album」を2003年にCDにてリリースします。2014年には同アルバムがイタリアのパンク・ロック/パワーポップ・レーベルRave-Upよりジャケットを変えてアナログ再発、そして昨年HoZacよりシングル「Who is my Killer?/Time to Go/House on Chester Road」がリリースされた、というのがCharlie ‘Ungryというバンドの大まかなストーリーです。

charlie-ungry2

それでは、Charlie ‘Ungryの音楽性について解読する作業を行っていきましょう。まずはCharlie ‘Ungry結成以前にTonyとJeffが在籍していたYellow Birdが74年に英Magnet Recordよりシングル「Attack Attack/Right On」をリリースしていたということ、またイギリスのパブを中心としてサーキットを行うなかで、Ian DuryやShakin’ Stevensともライブを行っていたという事実。彼らの音楽的素養としてのロックンロール・フィーリングというのはこの時点ですでに培われていたのではないのかなと。近年のオブスキュアなグラムロックの再評価運動もYellow Birdには手をつけていないようなので、ちゃんとした再発などを願うところです。

Charlie ‘Ungryが世間(の一部)に知れ渡るキッカケになったのが2003年のCDリリースということになるのでしょうが、上記したようにCharlie ‘Ungryの主な音源の録音は77年に行われたものです。NWOBHMの勃発をイギリスはキングバリーで行われたへヴィ・メタル・ディスコThe Bandwagon SoundhouseでのDJニール・ケイの精力的な活動、またはそのムーブメントをSound紙にてロック評論家ジェフ・バートンが取り上げた79年であるとすると、Charlie ‘UngryとNWOBHMというのは年代的に符合しないんですよね。NWOBHMの象徴的な存在であるIron Maidenが最初の音源Soundhouse Tapesを録音したのが78年末なので、Charlie ‘Ungryはそれよりも全然早いことになる。

歴史的に見てみたときに、ロックがグラム・ロック、そこにはNYドールズという象徴的なイコンが存在したりもするわけですけど、またはパブ・ロックやパンク・ロックなど、「ロックンロール」へと回帰していく方向性と、サイケやハードロック、プログレとか、もちろんそこにはパンクの影響、これは「影響」というよりは「反発」という側面の方が大きかったとは思いますけれど、そういうのを経てロックをさらに進化させていこうというヘヴィメタルへ向かっていく、その両方の流れがCharlie ‘Ungryの音楽には同居している、という見方もできると思います。この辺は、グラムロックをやっていたミュージシャンがパンクロック勃発の折に髪を切ってファッションも変えてパンクへと移行していった流れと、バックグラウンドは似通っていてもその趣が異なる要因になるのかなあと。彼らの音楽性を分析するうえで見逃せないファクトとして、「The Chester Road Album」のアルバム・カバーが60’sモッド・バンドThe Actionの「Baby You’ve Got It」のフライヤーに用いられた有名な写真をモチーフにしたものであるということを挙げておきます。

(左:Charlie ‘Ungry「Chester Road Album」Obscure NWOBHM 版、右:The Action”You’ve Got It”フライヤー)

Charlie ‘Ungry自身はLed Zeppelin、Deep Purpleや、なによりもBeatlesからの多大なる影響を公言していますが、名曲”Preacher”などで聴ける印象的なハーモニーはまんまThe Hollies的とすべきものでしょうし、先ほどのThe Actionへのリファレンスも念頭に置いたうえで彼らの音楽を再度聴き直してみると、ブルース的なハード・ロック調と聴こえていた楽曲にもその根底にはブリティッシュ・ビート的な「黒さ」があることに気がつかれるのではないかと思います。そしてそのことは彼らの本質そのものである、と言っていいでしょう。

Charlie ‘UngryをプロデュースしたTom NewmanというのもMike OldfieldのTublar Bellsのプロデューサーとしての知名度があまりにも高いため、Charlie ‘Ungryに関する文献においては「Tublar Bellsのプロデューサーによってプロデュースされた」という記述しか見かけないのですが、Tom NewmanはThe Advertsの79年のセカンド・アルバム「Cast of Thousands」をプロデュースしていたりもするんですよね。Rave-Up、またHoZacがCharlie ‘Ungryに注目したのは、たとえば彼らの”Time to Go”や”Try it Again”におけるReal KidsやNervous Eatersにも通じるタイトなロックンロール・フィーリング、”Who is my Killer?”のRAWなパンク・ロック的サウンド、または”House on Chester Road”のパブ・ロック/パワー・ポップにも直結するポップ感の部分だったのでしょうし、これについては後述しますが80年にCharlie ‘UngryがTom Newman抜きで録音した2曲”Keep The Peace”と”Let it Ride”はそのアプローチが他の楽曲とは幾分か異なることもあり、Tom Newmanがパンク・ロックに理解のある人間であったこと、そしてそのことがCharlie ‘Ungryの荒々しいサウンド・プロダクションに与えた影響というのは非常に大きいと思われます。(また、Charlie ‘UngryがTom Newmanが60年代に率いていたサイケ・ポップ・バンドJulyをチェックしていた、またはファンだった、という可能性については限りなく低い、と見ていいでしょう)

当稿の冒頭にてレビューを引用させていただいた石倉氏は、以前「NWOBHMに括られているOld Waveは不遇だ、報われていない」と仰っていて、それはCharlie ‘Ungryの場合まさにその通りで、もしCharlie ‘Ungryを最初に「発見」したのがメタル方面ではなく、パンク/パワーポップのシーンだったら、現在の彼らへの一般的な評価っていうのがまったく違ったものになっていたのではないか、というのが正直なところだったりします。ですが、これはまったくもって皮肉なことではありますが、Charlie ‘Ungryが77年に一旦活動を停止した、そして80年に活動を再開した契機となったものこそがそのNWOBHMであった、というのは間違いなく事実でしょう。彼らがIron MaidenやAngel Witch、Diamond Headといったバンドたちに、ロックがへヴィ・メタルへと発展していくプロセスを見出した、そしてそれは自分たちの音楽にも通じるものがあったということ(たとえば、彼らの”Memories”はNWOBHM前夜のプロト・メタルとしての熱量が十分に感じられるものです)。そのことは誰からも相手にされずにひっそりと活動を停止していた彼らを、とても勇気づけたのだろうなということは容易に想像がつきます。自分たちの音楽はいまの時代にこそ、へヴィ・メタルのファンにこそ受け入れられるはず!そういう想いが自主レーベルの立ち上げでありシングル「House on Chester Road」のリリース、そして活動の再開を彼らに促した、だからこそ彼らはいまでも自分たちをNWOBHMの一員であると自負しているのでしょうね。

そしてこれもまたCharlie ‘Ungryにとっての重要なファクタターたりえるわけですが、77年の時点における彼らの「契機」とは間違いなく「パンク・ロック」であったはずなんです。先に書いたように彼らは60’sオリエンテッドなバンドですし(そもそも”Wherer are you now,Christina?”や”Digby Rising”などのナンバーを聴けばそれは明らかなことではあるのですが)、そういったバンドがグラム・ロック、パブ・ロック、ハード・ロックを経由して、77年にパンク・ロックの熱を、ダイナミズムをロンドンで体感した。その結実こそが彼らの音楽なのだと。昨年HoZacはシングル「House on Chester Road」を再発するのではなく、装いを新たにしてリーダー・トラックに”Who is my Killer?”を据えた、それはこの楽曲こそCharlie ‘Ungryがパンク・ロックに影響されたバンドであったという証左に他ならない楽曲だから、でしょう。ハード&へヴィなリフ、サビで多用されるファルセット、The Whoが「Sell Out」で表現したポップ・アート的なジングルが挿入されるギターソロ終わりの展開。一風変わったアイデアの数々をこんな楽曲にまとめ上げるこのセンス!60’sもメタルもパンクもパブ・ロックも、すべてが未整理ながら、77年というロックの歴史的に見ても過渡期であった年に、パンク・ロックを聴いて震えていたからこそあり得た音楽。熱。それがCharlie ‘Ungryのロックだったんです。

また、こうした考究のあとで、NWOBHM勃発後にCharlie ‘Ungryが1980年に新編成で録音した”Keep The Peace”と”Let it Ride”を聴いてみると非常に興味深いものになっていることがわかります。”Keep The Peace”はバンド史上最高に歪んだギター・リフでスタートする重厚な楽曲ながらもキャッチーなサビは健在、そしてブレイク部分ではサイケ・ポップ的アプローチを見せるという意外性の塊のような曲。一方、”Let it Ride”はRadio Stars、Jetz、Freshiesなどを想起させるようなポップなナンバーで、どちらの曲からも彼らがNWOBHMからダイレクトな音楽的影響を受けたという事実を図りかねるものです。当時、新しいNWOBHMバンドを血眼になって探していた各レコード会社のA&Rがこの2曲をチェックして困惑する光景が目に浮かぶようです。それでも、ここには先のTom Newmanとのセッション時の音源から、彼らがその音楽性を先に進めんとした姿がしっかりと残されているだけに、これ以降もバンドが存続していたら・・・と、つい考えてしまいますね。

メンバーのAndyは「The Chester Road Album」について

“This album is a snapshot of that day in the summer of 1977 and the songs have been transferred with no re-mastering from a rather dusty original tape.”

と語っていて、Charlie ‘Ungryというのは当のメンバーたちにとっては彼らの人生におけるほんの一瞬の輝き、煌めき、それは「青春」の名で呼ばれるような朧げで儚いもの、でしかなかったのかもしれません。ロック・ヒストリーにおいてもいまは星の数ほどあるマイナー・バンドのひとつでしかないことはたしかです。ですが、このバンドの特殊性、オリジナリティーについてはもっと耳目を集められて然るべきものだと僕は思っていますし、このコラムを読んでくださっているあなたがもしCharlie ‘Ungryを未聴で、少しでもこのバンドに興味をもっていただけたのであれば、Apple MusicやSpotify、またはYouTubeなどでも気軽に聴ける彼らの曲をチェックして、それからまだ入手しやすい「Who is my Killer?」(←コレ、音圧すごいです。。)のシングルを買ってくださったらなあ、と僕は願います。

実は、裏事情的な話になりますが、昨年シングル「Who is my Killer?」がHoZacよりリリースされたときに、僕はバンドにコンタクトをとって、インタビューを行うことをバンド・サイドから了承をいただいていたのですが、個人的にメンタル面で非常に苦しい時期だったため実現しなかった、という負い目が僕にはあります。なので、それについてはどこかで改めてバンドにオファーしたいなと思っている次第です。ここまで読んでくださってありがとうございます。それではまたの機会に。

(文責・古川敏彦)

カテゴリー: classic rock, hard rock, heavy metal, NWOBHM, power pop, punk, R&R, rock | 1件のコメント