Oh, My Heart by Shannen Moser

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フィラデルフィアのフォーク/ベッドルーム・ポップ、Shannen Moser(FacebookSoundcloud)が新作「Oh,My Heart」Name Your Priceにて公開。同作のカセットがBald Spot RecordsよりPre-Orderスタート(Link)。

検索したらの内容とさほど変わらない文言で今作のリリースを伝えるニュースサイトがいくつか出てきたし、じゃあこれ以上アレコレと書き綴っても蛇足に過ぎないのでここで終わり・・・っていうのもどうなのか。

ちょっと前から考えていたこと。「ベッドルーム・ポップ」っていう、いつからか頻繁にその名を目にするようになった音楽ジャンルが、Bandcampなどでこれほどまでにその規模を拡大させていった背景には、もちろん録音技術の発達・普及だとか、特別な楽器演奏の技術を習得しなくても音楽制作が出来る環境を比較的安価に構築出来ることになったなどのテクニカルな側面というのは当然あるとして、このカテゴリーがこれといった明確な定義づけをもたないことが近年の隆盛の最大の要因ではないか、と。Urban Dictionaryこの項目によると、ベッドルーム・ポップとは

A genre DIY indie music, bedroom pop is characterized by its lo-fi quality and often contemplative lyrics. Bedroom pop share elements with other indie genres including shoegaze, dream pop, jangle pop, and emo. Guitars and vocals often feature heavy use of reverb or delay.(by Jim Charlotte July 25, 2015)

とある。まあそんなところになるんだろうなと思いつつ、当然過去のポップ・ミュージックでも多数聴かれる自宅録音だとか、90年代のベッドルーム・テクノ、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」やビートルズの「サージャント・ペパーズ」などの多重録音など、そのオリジン、ルーツとして該当しそうなものをそこに加えることはいくらでも出来る。ただ、ある者はフィールド・レコーディングで自身の心象風景をそこに反映させ、またある者はガレージ・バンドで作成したノイズまみれのトラックに素っ頓狂なハーモニーを乗せたり・・・と、ベッドルーム・ポップと一言に言ってもその音楽性は非常に多岐に渡るし、定義づけがなされていないからこそ、その名の下になにをやってもいい、なにをやっても成立するという自由度の高いものとして認識されていて、そこに多くの「ベッドルーム・ポップ」を自認しているミュージシャンたちが魅力を感じたり、夢を見ているのではないだろうか、と。そう、それでいいんだよ。各々が想いを込めて、自分のベッドルームで自分だけの音楽をクリエイトすればいい。孤独に磨き続けたその音楽を、ネットでもなんでもいいからその場所から世に放てばいいんだ。

Shannen Moserは本人の意識としてはフォークまたはSSWなのだろうが、その音楽性は近年のフィラデルフィアのインディー/ベッドルーム・ポップ(Alex Gとか)と確実に同調するものだ。歌とアコースティック・ギターに、時折加えられるエレクトリック・ギター、ベース、キーボード、トランペット、チェロ、パーカッションのみで構成された簡素で素朴な音楽。ここには革新性があるとか、ポップ・ミュージックのネクストを担う可能性を秘めているとか、そういうものではまったくない。これを聴いていて熱い想いになるわけでもないし、生きる活力として機能してくれるわけでもない。それでも、1日の終わりにこの短いアルバムがモニター・スピーカーから流れるベッドルームは、僕に安らぎを与えてくれる。それもけっして仰々しいものではなくて、ホッと一息つけるといった程度のもの。朝になればまた明日がやってきて、目の前に山積みになっているやらなければいけないことや考えなければいけないことに向かっていかなければいけないから。だけれども、その小さな小さな束の間の「安堵感」こそが、日々の生活に埋没して心が摩耗してしまうことに抗う最大の武器なんだ。自分の身辺になにが起きても、マインドをニュートラルに保ち続けるためには絶対に不可欠なものなんだよ。

 

本作「Oh,My Heart」のチェロを担当したjulia petersはソロ名義でSoundcloudで音源を発表している(Link)し、ベースのwyatt oberholzerとギター、トランペットを担当しエンジニアリング~マスタリングを手がけたeric muthは同郷フィラデルフィアのハードコア・バンドGrowerのメンバー(注・「Oh,My Heart」のTrk-5はそこから取ったのかどうかわからないのだけれども“Grower”というタイトル)。eric muthは本作のカセットをリリースするBald Spot Recordsから昨年リリースされたオルタナ/エモ・バンドhorsecopsの「Annie」でもマスタリングを務めていて、このBald Spot Recordsの存在を僕は昨年リリースされたベッドルーム・エモとでもいうべきBuster傑作it’s in my paperback」のカセット・リリースをしていることで知ったのだけれども、この辺の人脈関係からフィラデルフィアのインディーの現在形をチェックしていくのは僕のto doリストに記してあること。そもそも僕は、Shannen Moserの過去作(2014年に「all dogs go to heaven」、2015年に「you shouldnt be doing that」をそれぞれフリーでリリースしている)をまだ聴いてすらいないという体たらくだったりするのだけれども、この「Oh,My Heart」というアルバム、音楽についていまなにかを書きたい、とにかく書きたいという自分の気持ちを優先しているのだから、そんなこと構うもんかって。それもこれから。

彼女は昨年Broken World Mediaが主催するBroken World Fesに出演したり、ニュージャージーのインディー・ロック・フェスFlem Festにラインナップされたりとかしていたようで、注目度はすでに充分に高いみたい。また、地元メディアのSwell Toneがフィラデルフィアのクラーク・パークにて演奏する彼女をシューティングしたフィルムを昨年末に制作していて、そこでは本作のTrk-7”Yr Undertaker”もプレイされているのだけれども、それが大層美しい。

 

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保護中: 2016/12/29

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Soggy by Soggy

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Killer French Stooged Punk/Heavy Rock,reissue from 1981!そろそろ終わりが見えてきた2016年は、この音楽が再び世に放たれた年として人々に記憶されるべきだ。世界中のロックンロール・ジャンキーたちへと投下されたヘヴィなロックのナパーム弾。原子爆弾。

Soggy(Facebook)はStooges/MC5~Sonic’s Rendezvous Band~New Order、またはAmboy Dukes~Ted Nugent、Blue Öyster Cultなどのデトロイト・ロックンロールの系譜に多大なる影響を受けたフランスはランスのロック・バンド。78年に結成されたバンドはStooges、MC5、アリス・クーパー、ブラック・サバスetcのカバーをもともとは演奏していたらしいが、徐々にパンク、ハード・ロックにインスパイアされた自分たちのオリジナル楽曲の制作に着手していく。本国フランス以外でもドイツ、ベルギー、オランダ、スイスでライブを行い、81年に自主制作でシングル「Waiting For The War/47 Chromosomes」をリリース。このシングルが本国のレコード店などで話題となりいくつかのメジャー・レーベルから誘いを受けたようだが、彼らの母国語であるフランス語で歌うことを強要されたことなどを理由に、彼らはメジャーとの契約をことごとく蹴っている。翌82年、結成から100回を超えるライブパフォーマンスの果てにバンドは空中分解。彼らの短い活動歴のなか、81年の5月にフランスのテレビ局FR3にてシューティングされた”Waiting For The War”の貴重な映像がこちら。

どうよ?音源としてはシングルを1枚発表したのみのこのオブスキュアな存在にフォーカスしたのがフランスのMémoire Neuveという再発レーベルで、Mémoire Neuveは2008年にバンドの唯一のシングル「Waiting For The War」を含む編集盤LP「Soggy」を、2012年には未発表曲集の2枚組LP「Slog」をそれぞれリリースしている。この2枚の編集盤はどちらも500枚限定であったこともあり、一部のマニアたちに行き渡って終わりだったのではないかと思う。実際、ebayなどでは非常に高値で盤が取引されているのが散見される。

Soggyの周囲が騒がしくなってきたのは2014年のこと。LA出身の人気スケート・ロック/ストーナー・ロック・バンド、The Shrine(Facebook,Tumblr,Bandcamp)が12インチ・シングルで彼らの”Waiting For The War”をカバーしたことに端を発する。The ShrineのSoggyへの入れ込み具合は本物で、翌2015年の11月にThe Shrineがヨーロッパツアーを敢行した際のフランスでのライブに、ご当地出身のロックンローラーであるSoggyのヴォーカリストBeb Soggyをゲストに呼び、共に”Waiting For The War”をプレイしている。このときのステージの模様をフランスのウェブzine、Soil Chroniclesのクルーが撮影したものがこちら。The Shrineのクルーがバックステージからステージに向かうBebの姿とステージ・パフォーマンスを撮影したものがこちら。この日の ライブは大いに話題になったようだが、他の誰でもないBeb Soggyにとっては、活動当時には正当な評価を獲得することもなく、80年代半ばには歌うことを諦めて定職に就き、それから30年が経過した現代に自身の楽曲やパフォーマンスが受け入れられたということがとても意義深く、また嬉しい驚きだったようだ。そして、The Shrineは翌2016年6月に毎年フランスのクリッソンで行われるへヴィ・メタル/ハードコアのフェスティバルHellfestに出演時、ならびに同年8月にLAのハードロックホテルで開催されたドゥーム/ストーナー/ヘヴィ・ロックの祭典Psycho Las Vegas出演時に再度Bebを招聘し共演を果たしている(Psycho Las Vegasでのパフォーマンスの模様がこちら)。また、Psycho Las Vegas出演のために渡米する姿を映したドキュメンタリー映画の制作費用を募るクラウドファウンデイングがSoggyのオリジナルドラマー、Olivier Hennegraveによって催され(Link)、こちらも見事に目標額8,000€を達成させている。

The Shrineが猛烈にSoggyにラブコールを送っていることに後押しされたのか、はたまた偶発的に同時発生したものなのか。フランスのレア盤の再発専門レーベルCameleon records(最近このレーベルからフランスのKBDパンクの代表格Gasolineのシングルが再発されたことは記憶に新しい。余談であるがこのレーベルのリリースはMotorheadタイプのロッカーHotchkissやlate 70’sのモッズバンドLes Lords、70年リリースのへヴィ・サイケBlow Mindなど、どれもオブスキュアなものばかりではあるが価値のある再発ばかりなので、時間のある方はCameleon recordsのBandcampをチェックしてみると面白いのではないかと思う)から2013年に「Waiting For The War」が限定プレスで再発されていたのだが、このレーベルがこの2年くらいかな?Bandcampでの音源配信に力を入れていて、昨年の12月に「Waiting For The War」の配信をスタート。

 

そして、この一連の再評価の流れを決定的なものにすることになるであろう「事件」こそがOuter Batteryによる2008年の編集盤「Soggy」の再発であり、または先月末にスタートしたOuter BatteryのBandcampページにおける同アルバムの配信である。

このロブ・タイナーやミック・ファレンのようなヘア・スタイルが特徴的な若き日のBebを写した、インパクト充分なジャケに導かれてプレイヤーを再生すると、シングル「Waiting For The War」のB面曲”47 Chromosomes”の焦燥と情動に駆られて痙攣するヴォーカリゼーションに心臓を鷲掴みにされる。驚愕の一言。続く”Lay Down A Lot”のダウン・カッティングのリフ!リフ!リフ!3曲目のへヴィ・ロック・ナンバー”I Feel Top of the world”が無愛想に響くころには、この編集盤が年間ベスト再発なんてそんな生易しいレベルの音源ではなく、late 70’sからのロックのクラス分けを見直す必要性を覚えるほどの、驚天動地の一枚であることを僕は痛感する。これほどまでに凄絶な音源を聴かないで、よくもまあぬけぬけとこれまで僕はロック・ファンを自認していたものだ、と自分自身に呆れつつ。

どんな音楽に影響を受けているか、そしてそれをどのように自身の音楽に反映させているか、というのは別段Soggyに限ったことではなく、ミュージシャンの音楽性、さらにはそのスピリットを考えるうえで非常に重要なことである、とここでは言い切って、比較の対象として挙げるに適切かどうかの判断は当稿に目を通してくださっている方々に委ねるとして、Soggyと音楽的なバックボーンに近似性の高さが見られるオーストラリア出身のlate 70’sのロックンロール・レジェンドRadio Birdmanなどは、MC5が70年の「Back In the USA」においてロックンロールの構造をミニマム化することでダイナミズムとスピード感を獲得したことを基にして、非常にスマートな音楽性を展開することに成功しているが、それとはまったく対照的にSoggyのロックはまるで洗練からは程遠い、粗暴で猥雑な代物である。Soggyがデトロイト・ロックンロールから継承したものの核は、Stoogesの「Funhouse」全編で繰り広げられる暴力とセックスに支配されたカオティックな、マグマの噴出のように過度の熱量を宿したグルーヴだ。

例えば、Soggyの音楽性を指してヘヴィ・メタル寄りの視点から「NWOBHMとStoogesの出会い」というような形容をすることは可能だと思う。近年「メタル・パンク」と称されるようなRAWなメタルに、Soggyとの相似性を見出すことは容易であろうし、Soggy自身が自分たちの音楽性をHard RockとNew Waveをもじって「Hard Wave」とセルフ・ラベリングしていたことや、バンドの解散によって実現こそしなかったものの、82年にはJudas Priestのヨーロッパ・ツアーのオープニングアクトを務めることが決定していた、という事実からも同時代のへヴィ・メタルとは相関性があると考えて間違いないだろう。また、言うまでもなくSoggyはパンク・ロックであり、へヴィ・ロック然としたアプローチを残したプロト・パンク的でもある・・・この点に関しては説明不要だろう。KBD系のパンク・ロックのコレクターにはSoggyの「Waiting For The War」はメガレア盤として有名だろうし、その線から2002年の「Soggy」LPのリリースがあったことは確かなことだし、メタル・サイドからの評価の声というのもwebジンSpirit of Metalだとかアンダーグラウンドなブログなどから、数は少ないにしても上がっていたことは確認できるのだが、やはり近年のSoggyへの再評価運動がストーナー・ロック方面から起こっているというのは特筆すべき事項だろう。歴史的に解釈するならば、ストーナー・ロックの革新性というのはハード・ロック/へヴィ・メタルとパンク・ロック(~ハードコア・パンク)とをまったくの同一線上に置いて、その双方の音楽的価値を認め等しく影響を受けている点にあり、端的に言えば彼らのレコード・ラックにおいてはLeaf HoundsもAndromeda(UK)もRotzkotzもIvy Greenも等価であるということ。Soggyへのこのようなダイレクトなレスポンスを示したのがそれぞれの支持者層、トライブが旧態依然としてくっきりと分かれているメタル、パンクのカテゴリーのなかからではなく、パンク/ハードコア/DIYカルチャーと密接な関係にあるスケート・ロックとストーナー・ロックを両立させているThe Shrineであったというのは、このメタルとパンクの狭間で長い眠りについていたSoggyというバンドの音楽性について考えてみると、極めて象徴的な出来事であるように思う。もちろん、これはパンクだ、メタルだというような線引きはSoggyのロックの前では瑣末なことでしかないのだけれど。

このSoggyを巡る一連の動きは、アルバム「Soggy」が今年12月にiTunesでも配信開始されること、また今年の夏にPsycho Las Vegas出演のためにBebが渡米した際に、BebをVoに据えたThe Shrineが新曲をレコーディングしていてそちらの方も今後リリース予定とのことで、これからより一層加熱していくのではないかと見込まれる。Outer Batteryからもうすぐリリースになる「Soggy」のヴァイナルもそこらで見かけることになるのではないかと。それも当然といえば当然だ。この、世界から忘れ去られていた音楽の、ワイルド、ラフ、プリミティブ、RAW・・・どの形容詞も決して追いつかないように思われるハイ・スピードなロッカーっぷりが放つ美しさ、ストリート・ワイズ然としたまっすぐな知性たるや。こんな音楽が「オブスキュア」であっていいわけがないのだから。Soggyの残した音源に相応しいだけの熱量でもって、語られるべき音楽なのだから。本当に、こんなの他にないよ。2枚組LP「Slog」の再発を切に願いつつ。

 

今年6月にHellfestに出演した際のこのBebのパフォーマンスを刮目して見よ。30年も前に「諦めた」男が、世界に発見された喜びを全身で表現するさまを。「人生」を全力で宜う、その姿を。文字通り死ぬほどに、心が震えてこないか?

 

 

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