Inner Sanctum by The Cosmic Dead

昨年9月上旬、友人と数日間ではあるがイギリスに行ってきた。短い滞在期間のなかで、かねてから念願であったブライトンビーチ〜セブンシスターズという「さらば青春の光」の舞台でお馴染みの地を訪れたり、PILの新作「What The World Needs Now…」のリリースを祝って(というよりも、彼の地ではこういうイベントは「レコードショップをサポートするために」行われているようなのだけれども)Rough Tradeで催された、ジョン・ライドンのファン・ミーティング的なイベントに参加して、かのジョン・ライドンと対面したり。充実したロンドン旅行だったし、収穫も非常に多かった。そのときのことはいつかこのブログに記したいと思いながら、もう半年が経ってしまったのだけれども・・・。その数日間に残した最大の後悔こそが、The Cosmic Dead、Girlsweat、Snapped Anklesのカップリングで行われたライブを、チケットを購入していたにも関わらず時間の都合で見逃したことだ。

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The Cosmic Deadは、まるでバンドの体内に蟠るサイケ、ドローン、ドゥーム、クラウト・ロックからのインフルエンスを煮沸して溶解させたかのような、極めて「化学的」なロック・ミュージックを演奏するグラスゴーのバンドで、リリース毎に彼らの楽曲・演奏に籠るケミストリーが膨張していることから、すでにその支持層が彼らの出自であるところのアンダーグラウンドなサイケ・シーンに留まらないところにまで来ていて、今後の動向が注目されているバンドだ。
The Cosmic Deadの1stリリースは2011年。バンドのジャム・セッション/リハーサル集である「Psychonaut」をデジタルでフリー・リリースしたのち、1stフルレングス「The Cosmic Dead」をWho Can You Trust?よりカセットにてリリースする。
ほぼライブ・レコーディングに近い状況で4trkを用いて制作された本作は、言わばサイケデリアのアンダーグラウンドに蓄積したマグマの噴出のよう。その後の作品に比べるとラフなプロダクションであるからこそ、バンドの体力を十分に誇示するものだ。Trk-4”Father Sky,Mother Earth”で40分に渡って展開されるトリッピーなへヴィ・サイケ・ジャムは、The Cosmic Deadがそのスタートの時点で高い理念を豊かな演奏技術にて実現させていることがわかる、感嘆すべき代物である。このアルバムはのちにParadigms RecordingsCardinal FuzzからそれぞれデジパックCD、ダブル・ジャケットLPで再発されている。バンドは続く2012年にライブ・テイクを集めた「Cozmik Live Aktion vol.1」、次いで1stアルバムの音楽性をよりスペーシーに展開した2nd「The Exalted King」(のちのCosmic Eye RecordsからLP再発もなされている)34分に及ぶタイトル・トラックは必聴)を発表。年が明けて2013年、バンドにとって意欲的な作品「Orbiting Salvation」をデジタル・フォーマットのみ(のちにParadigm Recordingsから極小ロットのCDRでも再発されたようだが)でリリースする。
これまでの彼らの作品群と同様に無愛想ではあるが、The Cosmic Deadを特徴づける威圧的とすら言っていい強烈なビートは鳴りを潜め、非常に穏やかなアンビエント・ミュージックにシフトしてみせたコンセプト・アルバム的なコンピレーションで、収録楽曲はアルバムのジャケットが主張するほどにはドローン寄りではなく(Trk-3を除く)、むしろクラウト・ロックのアンビエント・ミュージック的な側面、相関性の部分にフォーカスして、彼らなりの解釈を加えたものとすべきであろう。そして、彼らはライブ・アルバム「Live at The Note」(カセットは彼らの地元グラスゴーのインディー・レーベルStabbed in the Back Recordsから)を挟んでサード・アルバム「Inner Sanctum」を発表。
Evil HooDooからカセット/LPでリリースされた本作において、「The Cosmic Dead」、「The Exalted King」よりも立体感を増した彼らのバンド・サウンドはひとつの頂点を迎える。「Orbiting Salvation」というアンビエント作品を経由して、よりアグレッシブになった楽曲群は覚醒感に満ちており、聴き手のモニタリング環境に関係なく三半規管をダイレクトに揺さぶってくる(これはあくまでも個人的体験に基づくものだが)。また、各トラックがこぞってトライバルな指向を強く帯びてきたことも、The Cosmic Deadの音楽性に深み、奥行きを与えていると言えるだろう。The Cosmic Deadはリリース量の多いバンドであるし、迷ったらまずはここから。本作の充実度が英国内外で評価されたこと、または圧巻のライブ・パフォーマンスが話題を呼んだことからThe Cosmic Deadは各フェスティバルにも出演依頼が相次ぐようになっていく(2014年には僕らに馴染みの深いところではBo Ningenともフェスで共演している)。同年にはPigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigsとのスプリット(The Cosmic Deadサイドはこちら、Pigs~はこちらでそれぞれ聴ける)を新興レーベルThe Old Noiseから180g重量盤でリリースし、翌2014年にはスタジオ・アルバムとしては4枚目となる「Easterfaust」( LPはParadigm Recordingsから、CDはSounf of Cobraから)を発表。緩急の激しい長尺楽曲”Easterfaust”を”part1″、”part2″と分割して収録した今作では、前作「Innner Sanctum」で完成したサイケデリック・スペクタクルをよりコンセプチュアルに展開したアルバムで、そのサウンドの求心性をさらに強いものとしている。先に述べたフェスへの出演を含めて2014~15年には彼らの活動は各地でのライブが中心となっており、なかにはドゥーム・マスターElectric Wizard(!!)とのカップリングもあった模様であるが、音源のリリースについてはこれまでの彼らのリリース・ペースは幾分か後退し、2014年にMugstarとのスプリット12インチ(こちら)ならびにInstructional MediaよりGuadian Alienとのスプリット12インチ(こちら)を、2015年にはEvil HooDooよりGirlsweatとのツアーを記念したスプリット・カセットを(こちら)発表したのみに留まっている。そのなかで、冒頭に記した僕が見逃したライブというのがそのGirlsweatとのツアーのうちロンドンにて行われたライブなのだが、これまでは楽曲を構成する要素でしかなかったエクスペリメンタル的な指向性が前面に押し出されたGirlsweatとのスプリットに収録の”Trembling Balls”の出来は刮目に値するだけに、また、インディーポップ的なGirlsweatとのカップリングというのも意外な組み合わせだったし、そのライブ・パフォーマンスを実際に体感してみたかったのだけれども・・・。
↑の動画は2014年に彼らがDuna Jamというフェスに出演した際のライブ・フッテージ、フルセット。ステージ前方下手よりワンカメで撮影されていることで、時間の経過とともに日が沈んで会場が夜の帳に包まれていく光景が克明に記録されており、彼らへの幻想を嫌が応にも高めてくれる。
 個人的に、もう長いことドゥームやストーナー、スラッジといった音楽を、決して熱心とはいえない態度ではあるが聴き続けている。それと同様に、ドローンも。それらの音楽の歴史を紐解いてみれば各々に関連性があることを頭では理解しながら、どうも実感が湧かなかったのだけれども。僕のBandcampのファン・アカウントのほうでフォローしている人たちが日々熱心に購入している音源がそういった音楽で、昨年は日常的にそういった音楽を聴くようになった。その流れで、上記したドゥームやドローン、またはエクスペリメンタル、サイケといった音楽がすべて体系的に繋がって行ったことで、これまでとはまったく違う角度からそれらの音源を掘る毎日が僕に訪れた。そのど真ん中にいるようなバンドなんだよな、The Cosmic Deadって。なので、今年は彼らのアルバムが出るだろうし、そちらには猛烈に期待しつつ。タイミングが合うようであれば再度イギリスを訪れて彼らのパフォーマンスを体験してみたいと思っている。
カテゴリー: ambient, art rock, drone, experimental, psychedelic, stoner パーマリンク

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