The Non​-​Somniac by Somniferous

つい先日、久し振りにIsisの2004年の名作「Panopticon」を聴き直して、あの作品はタイムレスな価値を有するアルバムである、という認識を強めた。「Panbopticon」はIsisが鋭角なハードコアサウンドを深化させていく過程において、ポスト・パンク/NWのクールネス、ダークネス(これについてもJoy DivisionやKilling Jokeからダイレクトに影響を受けるのではなく、または00年代に高まっていたリバイバルの気運に煽られたわけでもなく、恐らくはUKクラストの始祖Amebixを経由してそうなった、というのは注目すべき点なのではないかと)に接近しつつ、ポスト・ロックと共振することによってポスト・メタル勢とはまた違った側面からプログレッシブ・ロック的アプローチを試み、結果としてプログレの精神性を包括したかのような、00年代の傑作の1枚だ。そしてバンドはAereogrammeとの充実したコラボを経て、2006年のアルバム「In The Abscence of Truth」において「Panopticon」で構築した音楽的な体系、文脈・・・そういったものをあっさりと解体しようとしてみせた。そんな、バンドの音楽への追求心、姿勢というのはストイック極まりないものであったはずだし、美を湛えてすらいたわけだが、だからこそ発表から10年以上が経過しても「Panopticon」は経年によってくたびれてしまうことなどまったくなく、現代のリスナーたちをも直撃する作品たり得ているのではないかと。

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そのIsisを輩出したマサチューセッツ州ボストンより現れたニューカマー、Somniferous(Facebook)の1stシングル「The Non-Somniac」は、まるで先達の「意志」を宿すかのような、既存の音楽様式からの逸脱という誘惑から香る甘美さ、そこから得られる体験を道標として類推したエレメンツを再構築していくことへの野心に溢れた、「揺らぎ」や「微睡み」といった安息のサークルから「覚醒」へと向かう行程そのものをリスナーと共有していくことを目的化した、ポスト・ロックという名のエクスタシー・シンフォニーだ。比較の対象として挙げるには互いのバックボーンや目指すところが異なるのだろうし適切なものではないのかもしれないけれど、同日にリリースされたアトランタのWanzwaの新作「Wanzwa Ⅳ」で展開されるDjent/メタルを基にしたプログレッシブ・ロック、またはサイケ的なアプローチとはその方法論に数多くの相似性が見出せることもあって、この3日間僕はこのふたつの音源を並行して聴いている。
まだSomniferousについてのインフォはなにもないに等しい。Bandcampでのクレジットからワンマン・バンド的なものであることは伺えるけれども、彼(または彼女)のFacebookページも現時点でいいね数5人とかで、投稿などもほとんどなくアーティストからの情報発信、我々リスナーとの交流の場として機能しているとは言い難い。まあ、一昨日に1stシングルがリリースされたばかりのアーティストなのだから情報がないというのは当然と言えば当然なのだろうけれども、このSomniferousというアーティストが鈍く放つ光の照射範囲の外側にあるアレコレ、言うなれば音楽以外の付加価値の一切を放棄しているかのような印象を、その壮絶な音源の印象も相俟ってか、なんとなく、薄らとではあるが受けることはたしか。シングル収録の2曲がそれぞれ8分、10分という長尺のインストナンバー・・・それがSomniferousのいまのすべて。
音楽に関して最近個人的に抱えている想いとして、自身の快感原則をすべて否定することで見えてくる地平に立ちたい、というのがある。結局のところ僕個人の音楽的体験、そこで培った経験則なんてものはたかが知れていて、例えばそれが可視化されたものが自分のBandcampのファン・アカウントに購入履歴として残った約1,000枚の音源。それに固執することは矮小なユートピアのなかで死を待つようなものではないか?まだ聴いたことのない音楽、まだ味わったことのない体験への圧倒的な渇き。それらを潤すために僕はこれまで過ごしていた場所、文体から積極的に離れていきたい。いまはそう思っている。「The Non-Somniac(睡眠不能性)」と題されたSomniferousの1stシングルには、自分のそんな想いと同種の「飢餓」に似たものを見て、勝手なシンパシーを感じている。2016年も、孤独であれ。

カテゴリー: alternative, experimental, metal, post-rock, shoegaze パーマリンク

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