Kill Them​.​.​.​All by The Kill

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パンク/ハードコアのファンにとっての聖典のような、Black Flagの81年の1stアルバム「Damaged」については、もう説明はいらないのではないかと思う。ヘンリー・ロリンズのストロングなヴォーカルと、バンドが過度なテンションで叩きつける音塊とが渾然一体となってリスナーを襲う、クラシック中のクラシックだ。そして、今年の6月にBandcampにてリリースになった、オーストラリアはメルボルンのレコーディング・スタジオGoatsound(FacebookWeb)が企画した「Damaged」のトリビュート・アルバム「Black Flag Damaged Reinterpretation Album」が非常に秀逸な出来でよく聴いている。

今年の5月16日の土曜日、Goatsoundに縁のある全15アーティストをスタジオに集め、それぞれ30分毎にスタジオに入れて「Damaged」収録の各楽曲をカバーさせて、オリジナル・アルバムのトラックリスト通りに並べたこのトリビュート・アルバムは、その制作の経緯からして一種のお祭り感があって、各アーティストがセレクトしたそれぞれの楽曲の解釈の仕方の違いを確認するのも楽しいので、「Damaged」に思い入れのある方は一聴の価値ありかと。そして、本作の冒頭を飾るThe Killによる”Rise Above”カバーが凄絶極まりなくて、最初に聴いたときは唖然としてしまった。

Goatsoundによる解説「Grindcore version of the classic opening track. Fast as fuck, Blast as fuck!
In their eyes faster is always better… FASTER!」の通りのグラインドコア・カバー。グラインドコアの流儀で楽曲を破壊したりズタズタにするのではなく、あくまでも原曲への愛をもってファストにプレイした、というようなもの。これは本当にインパクト絶大だった。

The Kill(Facebook)はオーストラリア、メルボルンのスリーピースのバンドのグラインドコア・バンドで、彼らのFacebookページに掲載されているバイオグラフィーなどを集約すると、97年~99年にメルボルンで活動していたグラインドコア・バンドOpenwoundが解散した後、その主要メンバーであったJayとRobyが同じくオーストラリアのUndinismのNickをVoに迎え入れてThe Kill結成され、ファーストデモを制作((注・ドラマーのJayはThe Killと並行してFuck I’m Deadにも在籍していた)。2001年にRetaliationとのSplit EPを発表し、地元オーストラリアのNo Escape Recordsと契約。ヴォーカリストをNickからBlood DusterのTony BLOOD DUSTERに変えて2003年に彼らのバンド名となったNapalm Deathの”The Kill”のカバーや、同時代に隆盛を極めていたエモへの痛烈な皮肉を込めたナンバー”Fuck Emo”などを収録したミニアルバム「The Soundtrack To Your Violence」(2008年にはファーストデモとこのミニアルバムを1枚に纏めた「Hate Sessions 2000 ~ 2002」がリリースされている)を発表するも、バンドは活動を停止。それから数年を経て、2008年にSUPER FUN HAPPY SLIDEのNikをVoにバンドは再編され、翌2009年にドラマーのJayによるレーベルBlastafuk(FacebookBlog)よりFMラジオ出演時のライブ・レコーディング集「Blastbeatin The Shit Outta PBS(Live To Air)」をリリース。2011年には同じくBlastafukよりシングル「Shower Of Brinks」を発表ののち、アメリカはメリーランドで毎年開催されるエクストリーム・ミュージックの祭典MARYLAND DEATHFESTに出演し、多くの観衆の喝采を浴びる。その翌年、2012年に満を持して1stフルレングス・アルバム「Make ‘em Suffer」を各国のレーベルよりリリースする。また、2010年にレコーディングされていたというマテリアルの数々がドイツのWhite Eyes、オーストラリアのCaptain Cleanoff、日本のMortalized (!!)、アメリカのCommunion・・・と、次々とSplit 7インチでリリースされていくなかで、2013年にはポーランドのSelfmadegodよりアメリカのNoisear、Relapseからのリリースでもお馴染みのポーランドのAntigamaとの3 way split CD「Antigama + The Kill + Noisear」に参加。そして今年1月にリリースされたのが当エントリーの表題である2ndフルレングス・アルバム「Kill Them.​.​.All」だ。

「皆殺し」というタイトル通りに、アルバム全編を通して縦横無尽に繰り広げられるグラインドコアの絨毯爆撃。ほとんどの曲が1分前後で終わる全19曲。過去作と比べたときにギターのリフがスピード・メタル/スラッシュ・メタル的になってきた部分であるとか、ストレートなメタル的カタルシスを得られる楽曲が目立つようになったことが特筆すべき点か。彼らが影響を受けた存在としてFacebookページに「Early Napalm Death & Judas Priest」を挙げていることに関して、そのサウンドからJudas Priestの影響という部分が取り沙汰されることはあまりないのではないかと思うのだけれども、深読みするならばプリーストの「British Steel」における圧巻なまでのギター・リフを咀嚼してグラインドコア的なスピード感でもって吐き出されたのが本作におけるギター・サウンドである・・・というのはやはり強引だろうか。また、本作にMetallicaの1stアルバム「Kill ‘Em All」のパロディー的なタイトルを掲げているのも意味深長というか、The Killによるスラッシュ・メタルのグラインドコア的アプローチの結果が本作である・・・という彼らの意図が見え隠れする気がしてならない。Metallicaのラーズ・ウルリッヒはNWOBHMのマニアとして有名だが、彼はもともと10代より熱心なパンク/ハードコアのリスナーで、Metallicaが2013年に開催したフェスティバルOrion Music + Moreにデトロイトのプロト・パンク・バンドDeathを招聘し、多くのメタル・リスナがチャック・シュルディナー抜きでDeathが再結成するのか!?と困惑したというエピソードはまだ記憶に新しい。これは僕が長年に渡って主張し続けていることなのだけれども、Metallicaの1stアルバムはオブスキュアなパンク・ロック発掘コンピ「Break The Rules」のVol.8のジャケットを飾ったことで有名なカナダのパンク/ハードコア・バンドDayglo Abortionsの1stアルバム「Out Of The Womb」に多大なる影響を受けている、というよりもあの「Out Of The Womb」の暴力的なサウンドを目指したものであったはずだ。「Kill ‘Em All」というアルバムは、通説では80年代初頭に渡英したラーズ・ウルリッヒがNWOBHMの洗礼を受けたのち自国に戻って、パンク/ハードコアのスピードでそれらのメタル的なサウンドを追求したもの・・・ということになっているが、その根底にあったのは間違いなくDayglo Abortionsの「Out Of The Womb」のRAWなサウンドだったのだと思う。そういった僕の思い込みとかっていうのはこのThe Killの「Kill Them.​.​.All」を聴くうえではまったく関係のないただの戯言に過ぎないのだけれども、本作に絡めてどうしても綴っておきたかったので書いてみました。・・・として、唐突にこのエントリーを終える。

 

 

 

カテゴリー: grindcore, hardcore, speed metal, thrash metal パーマリンク

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