laura pointless by ky==

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前回のエントリーでとりあげたjohnny gothの「Gray Sky」のカセットをリリースしているcellar door tapes(FacebookTwitterTumblr)が、レーベルとしての活動歴は今年に入ってからと浅くまだリリース量も少ないものの、私観ではあるが完全に飽和状態へと突入したカセット・カルチャーのなかでも、その運営においてのアーティストのセレクト・審美眼には確固たる意志と哲学があり、掘れば掘るほどに新たな出会いと発見があり、現在アナウンスされているコンピレーション盤には期待度が高まるばかりだ。適切かどうかはわからないが、2013年くらいのカセット・カルチャーが始まったばかりの静かなエキサイトメントというか、ここからなにかがはじまるんだという、あの感じ。それを強く感じるレーベルだ。

そして、今回のエントリーで紹介するのがそのcellar door tapesの1stリリースであった、フロリダ州ジャクソンヴィルのky==(TwitterTumblr)による「laura pointless」という作品である。

ky==は2014年4月リリースのEP「e」からその音楽活動をスタートさせている。

収録曲4曲のトラック名がそれぞれ”1/1”、”1/2″、”2/1″、”2/2”であることからも分かるように、本作は彼が敬愛するブライアン・イーノの名作「Music For Airports」への彼の回答、すなわちイーノがかの作品にて意図した「無視することも聴くことも出来る音楽」を、彼のベッドルームの光景の中から切りとって示したものであり、Trk-2″1/2″の後半でYelleの”Trstesse/Joie”が、Trk-4の”2/2”ではDaniel Varsanoによるサティの”Gymnopédie No.1”が、それぞれサンプリング、というよりはラジオから流れてきたサウンドをそのまま録音したかのように使用されているのも、恐らくは本作のコンセプト-偶発性のなかにこそ「音楽」がある-を聴き手に強く意識させるためのものであろう。

そして彼は、トラックの再生から30秒が無音、正確には録音時のノイズを「環境音」として取り込んだ冒頭から単音のエレクトロニック・ドローンが鳴り響く「Bleach」を同年6月に、11月にはのちにアルバムに収録される「flowpool」(このトラックについては後述する)をそれぞれ発表したあと、今年2015年の1月にcellar door tapesよりカセットリリースされることとなる1stアルバム「laura pointless」をまさに満を持してリリースする。

アルバム収録曲7曲がすべて1分少々のショートチューン(これはやはりイーノの「Another Green World」収録のインタールード的なトラックを意識したものであろう)、計10分ちょっとのアンビエント作品。アルバムに先駆けて発表された、Orchid Tapesよりカセットリリースもされた日本のAtsuhito OmoriによるユニットEx Confusionの”Flow”(Link)をサンプリングした”flowpool”を聴いた時点で、EP「e」と比較したときにそのサンプリングソースからして現代的なアンビエント・サウンドにリンクさせていこうという彼の意思を表明するものであることは明白であったのだが、本作で彼が用いたサンプリング・ソースはそのEx Confusion以外にWarren Hildebrand(Foxes In Fiction、Orchid Tapes主宰)、Sam Ray(Ricky Eat Acid)、90年代オーストラリアのダーク・アンビエントSoma、フランスのアンビエント/エクスペリメンタルles hallesがクレジットされており、作品制作のインスピレーションを得たアーティストとしてはNoel Thrasher(Elvis Depressedly/Coma Cinemaと非常に近いところにいるSSW)、Mathew Lee Cothran(Elvis Depressedly/Coma Cinemaのリーダー)、Delaney Mills(Elvis Depressedlyのメンバー)、Logan Archer(ky==の友人であり、現在はxanax tomboys名義で音楽活動をしているlo-fi/DIYなフォーク/SSW。cellar doop tapesの主宰者でもある)、そしてBrian Enoを掲げている。それらのクレジットに頼るまでもなく、本作に僕が興味を惹かれるのはやはり、この「laura pointress」というアルバムがcellar door tapesのオーナーのLogan Archer/xanax tomboysやレーベルメイトのjonny gothと同様に、「Orchid Tapes以降」のサウンドを明確に打ち出してきているということ。そして、Logan Archer/xanax tomboysやjohnny gothはOrchid Tapes周辺のなかでもFoxes In FictionやAlex G、Elvis Deperssedlyあたりのlo-fiな歌モノ路線を継承して独自に展開しているのに対して、ky==がとっているアプローチはOrchid Tapesの作品群からChillなヴァイブスを抽出し、そこからのインフルエンスを咀嚼したうえでフィールド・レコーディングを交えてアンビエント作品にまで敷衍していく、というものだ。そして、これがリスナーを限定したスタンスによるもの、Orchid Tapes周辺のリスナーのみに届けようとするものではなく、アンビエント・ミュージックの魅力・普遍性を、普段エクスペリメンタル/アンビエントとは程遠いリスニング・ライフを送っているリスナーにまで伝え得てしまうような、深淵でありながらも非常に遠心的なサウンドにまで到達させていることには詠嘆させられる。なお、本作のカセットのB面には本作と同時期に発表になった「softer snows」に加えて未発表曲3曲が収められている。Bandcampのストリーミングには対応していないそれらのトラックを、僕は彼の好意によって聴かせていただいたのだが、「laura pointless」と同一線上にある美麗なアンビエント作品であった、ということを記しておこう。

もう、ここにはっきりと明記してしまおう。いま僕はこのky==であり、cellar door tapesというレーベル、そしてその所属アーティストたちに、「インディー」の未来形を見ている。

 

 

カテゴリー: ambient, diy, drone, experimental パーマリンク

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