I am forever dream by Triste L’Hiver

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ポスト・ブラック・メタル、という言葉もAlcestやDeafheavenらの大ブレイクによって、ブラック・メタルのリスナー以外、たとえば普段ドリーム・ポップやシューゲイズを好んで聴く・・・という方々にまで浸透している感があるが、そもそもその起源だとか誰が最初にそういったことをはじめたか、だとかっていうのが明確ではなかったりもするのだけれども(今回、ネット上で調べたけれども諸説が飛び交っていてよくわからなかった、というのが正直なところ)。ただ、もう語り尽くされている感があるが、Alcestの2005年のEP「Le Secret」~2007年のアルバム「Souvenirs d’un Autre Monde」の、シューゲイズとブラック・メタルをトレモロで融和させる、という方法論はまさにコロンブスの卵な発想の転換というか、それはまさに「発明」といっていいほどに革新的なものであったし、その後無数のフォロワーを産み出すこととなるのも必然といえるほどに、シューゲイズとブラック・メタルの親和性の高さを世に知らしめることとなる傑作であった。(シューゲイザーとブラック・メタルの関連性について、ブラック・メタルの歴史を紐解きつつメタル側から考察した日本のブラック・メタル・バンドSIGHの川嶋氏のこちらのコラムは非常に参考になるので、是非ご一読を)。Alcest以降「ポスト・ブラック・メタル」を掲げて、シューゲイズ、ポスト・ロック、ドリーム・ポップetcなどと、それまでのブラック・メタル文脈にはなかった音楽的様式を自身の音楽に導入する、というのは日常的になったことは確かだろう。

上記した川嶋氏のコラムにも特記されているBATHORYがワンマン・バンドであったこともあってか、現在でもブラック・メタルの音源が他にメンバーを率いずにワンマンで成されていることは決して珍しくない(ちょっと前に話題になったVICEのこの一連の動画は、ブラック・メタルのアーティストたちが何故ひとりで音源を制作するのかが彼らの口から語られる、貴重な映像だ。個人的にはXasthurが喋る姿が観れただけでも感涙ものであった)。現在ネット上でポスト・ブラック・メタル関連の音源を公開しているアーティストたちをDIGってみると、やはりワンマン・ユニットであることも非常に多い。それらには、DTMの進歩によって以前よりも手軽に録音環境を整えることが可能になったことも影響しているはずだとは思うのだけれども。ただ、あくまでもそのDTM云々っていうのは自宅で簡易にハイクオリティーな録音が出来るという恩恵を享受するというものであって、そのことが音楽性にまで影響を及ぼしているポスト・ブラック・メタルのアーティストっていうのはあまりいなかったんじゃないかと(アンビエント的方向性に向かうアーティストは多数見受けられるけれども)。

今回のエントリーの主役、米ミシガン州シェアウッドのCount Ishnackによるワンマン・ポスト・ブラックメタル・ユニット、Triste L’Hiver(Facebook)は、すでに様式化しつつある「ポスト・ブラック・メタル」とは大きくその相を異にして、ポスト・ロックやシューゲイズ、NW/ポスト・パンク的要素に加えて、積極的に近年のDTM的な音楽性、たとえばChillwave/Synthwave的なシンセ・ポップやDarkwave、フューチャー・ファンクなどを大胆にミックスした、非常にユニークなアーティストだ。ここからは彼のディスコグラフィーを追っていこう。

Triste L’Hiverは、2012年EP「Once Again」と「New Illusions」を発表。

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523653_285770704862114_1367311345_nこの時点では典型的なポスト・ブラック・メタルというか、シューゲイズに若干ポスト・ロックの要素を加えたブラック・メタルで、のちにその音楽性を特化させることになるプログラミング、シンセに関してもあくまでもその音楽を構成するエレメントのひとつ、といったレベルのもの。特筆すべきものはないように思う。

Cycles様相が変わってきたのが2013年のシングル「Cycles」。15分に及ぶ長尺のシューゲイズ・ブラック・ナンバーながら、それまではあくまでも生音の代用品といった趣きであったドラムのプログラミングが、まるでハンマー・ビートのようなミニマリスティックなビートを刻みはじめ、シンセ・パートの比重が増すようになる。そして同年発表のEP「Glory of Youth」において、Triste L’Hiverデスボイス+シューゲイズ+シンセ・ポップといった音楽性にシフトしていく(インスト曲のTrk-4″Every Looks Burn”に至ってはもうギターの音量も相当絞られた、シンプルなエレポップ・ナンバーとなっている)。

Glory+of+Youth+coverこの頃、彼は自身のFacebookページにて、Chill Mega Chillよりリリースされたインディ・ポップ/シンセ・ポップの名作、Yung Lifeのアルバム「S/T」を絶賛していたり、当ブログでも何度かとりあげたデトロイトのポスト・パンクの雄Electric CorpseのEP「S/T」をシェアしていたり・・・と、BandcampのDIGによってさまざまなインディー・ミュージックに積極的にアダプトしようとしていたであろうことが見て取れる。

そして同年、EP「Night of Years」と未発表デモ集「Silver Strings」を発表。

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ブラック・メタル的要素が完全に減退した「Night of Years」冒頭曲”Emerard Lights”に代表されるように、この2枚のEPで彼はそのシューゲイズ・ブラック的な音楽性とエレ・ポップ的な音楽性との融合を果たそうとしているが、あくまでもその完成形の前の段階の習作、といった感がある。

ここまでの作品はこのエントリーを書いている2015年5月20日現在、すべて彼のBandcampページからは削除されてしまっているので現在の彼にとっては不本意な作品なのかもしれないが、その後のTriste L’Hiverの音楽性を紐解くうえでのサンプルとして非常に重要であるし、YouTubeなどで比較的容易に聴くことが出来るものばかりなので気になった方は是非探してみていただきたい。また、Triste L’Hiverと平行して、彼は2013年にLusien Mith名義でブルータルなグラインドコアの「Born Thrice」を、同年Trinity名義でアトモスフェリック・ブラック・メタル寄りの「S/T」を、2014年にはcum angel名義でディプレッシブ・ブラックな「ghost tongues」をそれぞれリリースしていて、またTriste L’Hiverの名は伏せているもののBeardsnifferという名義のSoundcloudアカウント(Link)で、Triste L’Hiverのデモとみられるシンセ・ポップ・チューンや、上記した別名義での楽曲なども公開しているので、こちらも参考までに。(なお、Lusien Mith、Trinity、cum angelに関してはソロ・ユニットなのか他にメンバーを迎えてのバンド形態なのか、まったくインフォが出て来なかったことをここに記しておく)

そして2014年はTriste L’Hiver名義での作品はリリースされなかったものの、今年になってから「Faire un geste」、「Nouveau décret」、「I am forever dream」と3枚のEPを発表。現時点でTriste L’HiverがBandcampに公開しているのがこの3作品になる。

Synthwave的サウンドとシューゲイズ・ブラックが見事な融合を果たした”Spark”に続き、AC/DCの”Thunderstruck”的ギターフレーズからブラストに雪崩れ込む”Drive”という冒頭2曲が圧巻な「Faire un geste」がまず衝撃的。過去作品に見られたサウンド・プロダクションの脆弱さの問題も解決され、また、楽曲の強度も圧倒的にビルドアップされて、ほとんどのトラックにおいてブラストやデス・ボーカルを楽曲の中心部に据えてシンセ・ポップ的サウンドをそこに向かって配置するといったような構造へシフトしていて、最初に聴いたときは眩暈がした。本当に。なんだこりゃ!?っていう。シンセ・ポップ的アプローチが抑えられて、いわゆるシューゲイズ・ブラック、ポスト・ブラック的なサウンドそのものといっていい「Nouveau décret」の完成度も相当なものであるのだが、彼としてはどの作品にもフィットしなかった曲を集めたという「I am forever dream」こそが、やはりTriste L’Hiverの真骨頂だろう。Trk-3”There is only sky”で見せるNW/ポスト・ロック的ギターサウンドが、シューゲイズブラックとSynthwaveサウンドとが完全に融合して聴き手に襲い掛かってくるパートへとシフトしていくさまから得られるカタルシスは、一体なんて形容したらいいんだ?いま僕はTriste L’Hiverに出会って数日しか経っておらず、興奮が冷めやらない状態でこのエントリーを書いているのだけれども、本当にこの音楽は衝撃的。だって、そもそも意味がわからないもんね。シューゲイズ・ブラックにシンセ・ポップ的なサウンドを掛け合わせるっていう発想自体が。あまり軽々しくこんなことは言うべきではないことは分かっているのだけれども、このTriste L’Hiverは間違いなく「天才」なんだろうし、ポスト・ブラック・メタル云々を越えてなにかものすごいムーブメントがここから起こるんじゃないか・・・とすら僕には思える。あまりにいま僕が興奮しているせいでこのエントリーのテキストのクオリティーが著しく低いのは自覚しているけれども、一刻もはやくこのアーティストを読んでくださっている方々とシェアしたいので、とりあえず書いてみました。

カテゴリー: chillwave, dream pop, post black metal, post-punk, shoegaze パーマリンク

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