Blue Eyes by Mariage Blanc

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Mariage Blanc(FacebookTwitterSoundcloudTumblr)はそのキャリアを2007年からスタートと、活動歴も決して短くはないし、これまでいろんなメディアで取り上げられてきているのでご存知の方も多いのではないだろうか。インディー・ポップ然とした楽曲、ヴォーカリストMatt Ceraso のファルセットボイスがゆったりと紡いでいく美しいメロディー、曲によってはモッズリヴァイヴァルの影響すらも伺える清潔なビートを武器とするサンフランシスコ、ピッツバーグのインディー・ポップ・バンドだ。

このバンドはなによりも、こんな煌びやかでポップな曲を演奏するバンドが名乗っているのがMariage Blanc―「結婚詐欺」であるというのが、ストレートに言えば「屈折」してて素敵だなあと僕は思う。 彼らが結婚詐欺の加害者なのか被害者なのかはわからないけれど、そのどちらでも大差はない。彼らにとって「Mariage Blanc」とは、恋愛とはすべて不条理なもので、そこでは誰かを傷つけたり、自我が崩壊するくらいに自らが傷ついたりするということから、恐らくは不可避なくらいに残酷なものであるという事実に彼らが自覚的であることを示す言語シンボルにほかならないから。(なお、このMariage Blancというバンド名は”unconsummated mariage”、すなわち童貞と処女の結婚または性生活のない結婚を意味するっていうのもどっかで見たんだけど、実際のところどうなんだろう。そのどちらだとしても、まあ、彼らの愛への猜疑心だとか異議の申し立てとかっていう部分には変わりはないのだけれども)

Mariage Blancは2010年発表のセカンドアルバム『S/T』のTrk-1″Whenever You Say I Am”がPale FountainsとかBlue Boy、Jim Jimineeなんかの系譜に連なるポップ・ソングで、とにかく最高だ。
世界中の愛に敗れたベッドルームの惨めな孤独たちを祝福するかのように、賑やかに鳴り響く菅弦楽器。どうしょうもない毎日がほんの少しだけ軽くなったかのような錯覚にとらわれる軽快な楽曲。僕はこれまでもう何百何十回とこのアルバムを聴いては、その都度冒頭の”Whenever You Say I Am”に勇気付けられてきた。だから、次作EP『Undercurrents』において彼らが華美なアレンジを一切捨て去ったことに、自分たちの楽曲をどんなにポップに着飾ってみせたところで暗いベッドルームの光景は何も変わりはしなかった、という彼らの諦めのようなものがそこに見えた気がして、佳作ながらも僕は寂しさを感じたことをよく覚えている。彼らなりの「ポスト・ロックのインディー・ポップ的解釈」とでもいうべきサウンドの変化も、正直僕の好みではなかった。
そして、そんな理由からあまり待ち侘びていたわけでもなかった、Mariage Blancの今年4月リリースのニュー・アルバム『No Autobiography』から新曲”Blue Eyes”が、今月半ばに彼らのSoundcloudにて公開された。
前作『Undercurrents』でのポスト・ロック的アプローチをはやくも放棄して、歌を中心に据えて楽曲をシンプルに整理したようなプロダクション。もしくは、そのリリースから7年が経過して、彼らのディスコグラフィーのうちもっとも不完全な1stアルバム『Broken Record』での青い季節をもう一度自ら生き直そうとしたかのようなサウンド、というか。端的に言うならば歌とメロディー「だけ」の音楽。きっと彼らには迷っている時間はないということなんだろう。これがいい。すごくいい。弱り切った僕の心にもまっすぐに突き刺さってくる。この、憂鬱でありながらも脂質が限りなくゼロに近い透明な美しさに満ちた音楽の前で。僕はぼんやりとこんなことを思う。
僕とのこれからの時間を捨てて他の誰かと一緒に生きることを選んだ彼女が僕のもとに戻ってくることは、もう、僕がどう足掻いたとしてもないんだろう。きっとそれは誰のせいでもないし、仕方のないことなのだろう。気がつけば彼女との最初の出会いから12年間で、ゆっくりと僕の中に育まれていった彼女への愛は、先週の木曜日に。見事なまでに敗訴に終わってしまったんだ。間違いなく、今晩も僕は決して深い眠りには辿り着けないままに、ベッドの上で怯えながら冷たい朝を待つことになるのだろうし、それが何ヶ月か、もしかしたら何年に渡るかはわからないけれども、そんな夜をこれから先長いあいだ項垂れながらも僕は続けていくんだろう。他人の前では精一杯の虚勢を張って、彼女の幸せを祈っているフリをしながら。
それでも。いつか彼女と過ごした日々が、大切に握り締めすぎて皺が寄ってすらいた彼女への想いが、僕を責めてやまないこの胸の傷が、時間の経過とともに薄れていくことを僕は知っている。僕はいま、なによりもそのことが怖くて仕方ない。彼女の存在が、いつか、たしかに。僕の中で「過去」のことになってしまうということ。
Mariage Blancの”Blue Eyes”は、僕の心を支配しているそんな鈍い痛みを少しだけ和らげてくれるモルヒネだ。多分、僕の青い季節=青年期はきっと終わってしまったのだろうし、あの時期を生き直す気力はまったくないけれども、それでもこれからうんざりしながらやり過ごしていくであろう、僕のブルーな毎日を優しく包む毛布だ。僕にとって、これは絶対に必要なものなんだ。
このエントリーに目を通してくださっているあなたが、なにか、ココロに問題を抱えているならば、この”Blue Eyes”という美しい曲が、数分間だけでもあなたのココロを優しく包みこみますように。・・・というかね、こんな俺に言われてもなんの励みにもならないかもしれないけれどもさ、なんとかなるよ、きっと。どうにかなるって。明日もお互い元気出して行こうぜ!
読んでくれてありがとう。長かった2015年1月の終わりの日に。
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