Quality Time Records

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クリーブランドという土地は・・・もう、言うまでもないことではあるが、改めて。パワーポップのオリジネーターであるところのRaspberries(!!!)の出身地として有名だ。彼らが発表した4枚のアルバムは、そこに収録されている1曲1曲にそれまでのポップ・ミュージック/ロックンロールを「すべて」集約せんとした、遠大な理想と意志の結実である。”I Wanna Be With You”の当時の邦題「明日を生きよう」は、彼らの本質にまさしく肉迫していて秀逸だ。すなわち、Raspberriesは人が他者と生きるうえでその接点において生じる愛や官能または軋轢、齟齬、またはその副産物としての喜怒哀楽を総じて「Ecstacy」と表現することで、人間が生きていくということ全肯定した生命力であり意志である、ということだ。そんなRaspberriesの出身地として、また70年代後期にDead Boys、Pagans、Pere Ubu、Hammer Damageとか、数々の優れたパンク・バンドを輩出した都市としてもクリーブランドはパワーポップ、パンク・ロックのファンにとっては特別な場所である、と言い切ってもいいだろう。
そして、今回紹介するQuality Time Records(Facebook)は昨年9月27日のカセットストアデイにローンチしたばかりながら、上記のクリーブランドの先達の音楽でありその精神性を継承せんとする新進気鋭のDIYレーベルだ。カセットカルチャーも飽和状態になってきていて新興レーベルと聞いても食指が伸びない、という方も相当数いるかとは思うのだけれども、現行のパンクロック、パワーポップのファンであればこのレーベルがex-Warm SodaUseless Eatersblackbear + the surf bumsのドラマーRicky Hamiltonによって運営されているという事実を知ったら興味が湧くのではないか。
Bad Vibesはex-Bare WiresのTennent Mccabeによるニューバンドで、2013年にはBurger RecordsのショーケースにAPCHEやGlitzらと出演を果たしているスリーピースだ。8trkのカセットMTRで録音されたというこのアルバムは、Bare Wiresに比べてDirtyでSnottyなパンクロックが強烈で、僕はカセットを購入してからもうずっと聴いている。けど、正直ここまでクオリティの高いパンク・ロックなんだから、カセットじゃなくてヴァイナルで出して欲しいんだけど・・・。
Dionysian MysteryはRicky Hamiltonのblackbear + the surf bums 時代からの盟友、Carter Luckfieldによるバンド。サーフ/ガレージ、インディーポップ、ポスト・パンク、ドローン・・・と1曲毎に目まぐるしく曲調が変わる掴みどころのない作品。
Andrew Pitroneはlo-fiなアシッド・フォーク。ベスト・トラックはTrk-4の”Glider Goddess”か。こういった「パーソナル」な音楽にもフォーカスしているところがこのレーベルの面白いところではある。
Ma Holos(Facebook)はRicky Hamiltonがベーシストとして参加しているサイケ/プロト・パンク・バンド。RAWな弦楽器の質感を静謐なサウンドのなかで浮かびあがらせるTrk-2の”So Sick(For The Summer)”は名曲。つい先月に新しいアルバムをレコーディングして、同レーベルよりリリース予定ということで続報が待たれる。
そして、これがレーベルオーナーのRicky Hamiltonによるプロジェクト、Ricky’s Heart。彼がかつて在籍していたWarm Soda、Useless Eatersの影など微塵も感じさせないほどにジャングリーでインディー・ポップ然とした楽曲に度肝を抜かれる。Impose Magazineのこちらのエントリーにてプレミア公開された”Holiday In Purgatory”に至ってはど直球で1st〜Haful of Hollow期のThe Smithsをシャープにしたような音なのだけれど、モリッシー・ライクでありながらも朴訥さ・素朴さを感じさせるRickyの歌声が持つ魅力、またはこの音楽が現行のパンクロック、パワーポップのまさしくど真ん中にいる(「いた?」)人間によるものであるという事実をもって、Ricky’s HeartをただのThe Smithsの「クローン」的なものとして片付けてしまうことを躊躇わせられることは確かなので、アナウンスされているアルバム「Unknown Corporate」 までその判断は保留したい。・・・なんて言って、もうすぐやってくる春のあたたかさ、そのやわらかさを思うといまから憂鬱で憂鬱で仕方ない僕のような人間にとっては、この2曲の気怠いアトモスフィアはどこまでも魅惑的であるし、というかめんどくせーから単刀直入に言うわ。僕はRicky’s Heartが大好きだなんだわ。愛してる。(補足として、Quality Time Recordsから7インチシングルとアルバムを発表しているThe Nico Missileのアルバムにもミックスこそ違うもののこの2曲は収録されていて、またThe Nico Missileとはメンバーも重複するようであるし、そもそもがThe Nico MissileのTwitterアカウント名が@Rickysheartであることから、不確定ながらこの2つのプロジェクトは同一のものとして見てもいいかもしれない。The Nico Missileの他の楽曲はジャングリーなインディー・ポップに加えて、ポスト・パンク風味の曲も目立つが、そのどれもが良質で一聴の価値あり。また、Ricky’s Heartはナッシュビルのカセット・レーベルPaco TapesからのEPのリリースをやはりImposeマガジンのこちらのエントリーでアナウンスしているが、2015年1月26日現在未リリースのままである)
・・・と、現時点でリリースされている音源がパンクロック、サイケ、ガレージ、アシッド・フォークとジャンルは様々ではあるのだが、そのどれもがクリーブランドの過去の音楽に根差したところで鳴らされているものだ。彼彼女たちはみな、82年にTerminal Recordsよりリリースされたクリーブランドのパンクをコンパイルしたコンピレーション盤「Cleveland Confidentialを貪るようにして聴いてきたのだろうし(事実、Ricky Hamilton自身はあのコンピ盤からの影響を認めている)、そのうえで先人たちの音楽を昇華したものがQuality Time Recordsに所属するアーティストたちの音楽なのだ。そしてそれらのすべてが非常にDIY感に溢れたものばかりであるし、「DIY」って言葉がインフレを起こしてしまっているようにしか見えない現在のUSインディーのなかでもそれは際立っているように見える。少なくとも僕は現段階においてすでに、このレーベル/アーティストたちのそんなスタンスを全面的に支持する。・・・というかさ、「DIY」ってそもそもなんなのよ。
DIYとは、自分で自分の人生を決める、ということだ。他の誰でもない、自分自身で価値を構築する、または決めるということだ。「僕」も、「あなた」も。自分自身で生きる道を決めて、それを信じてまっすぐ歩んでいくんっていう、ただそれだけのことなんだよ。

 

カテゴリー: garage, indie pop, label, post-punk, power pop, psychedelic パーマリンク

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