【Now Dig This!】ルーパー (yzox remix) by k-over

yzox(ワイゼットオーエックス)とオンラインで出会ったのはたしか、2012年夏のSomeone Still Loves You Boris Yeltsinの初来日公演のときじゃなかったかと思う。僕は日本から最初にSSLYBYにファンメールを送った人間(←本当)だったりするくらいにはSSLYBYが大好きなんだが、そのライブには仕事の関係でどうしても行けなくて、仕方なく彼らがレコードショップにて連日敢行したインストアライブの模様を中継したUstreamを視聴していたときに、ソーシャルストリーム上にて・・・じゃなかったかなと。脇目も振らずに音楽に夢中になっている人だなあ、っていうのが僕の彼への第一印象。それからすぐに、彼が自分でもトラックを制作していると知り、そのアッパーなトラックの数々に僕は打ちのめされることになる。

yzox(Twitter,Soundcloud)はマッシュアップのクリエイター/リミキサー/トラック・メイカー。イギリスのGentlemenに影響を受けたという彼が作るマッシュアップは、ダンス・ミュージックの熱狂にロックの文法をクロスさせるようなものが多く、おそらくは彼がオルタナティブ・ロックを通過してビッグビートに出会ったときに味わったのであろう、ダンスミュージックからロック的なカタルシスを得られる!・・・という体験が彼の楽曲制作の根底にあるからではないか、と僕は常々思っているのだけれども。例えば、Beatlesとオールドスクールヒップホップをマッシュアップしていくというコンセプトで制作され、迷われレコードからリリースされた「vs Beatles EP」(リンク)なんかはその彼の本質がよく表れたものであるし、90年代半ばに(広義での)オルタナティブ・ミュージックを聴いていたリスナーの多くにとって特別な楽曲である、電気グルーブの”虹”に、定番ネタのIncredible Bong Bandの”Apache”と声ネタ(サンプル・ソース見つけられませんでした・・・)をミックスしたこのトラックは、音楽の持つ「楽天性」への彼の信頼が前面に押し出された素晴らしいものだった。

以前yzoxはTwitter上にて、自身の音楽制作に向かう最大のモチベーションは「怒り」だ、と発言している。一体なにに対して彼は怒っているのか。邪推するならば、彼にとって大切な音楽を人々が無視すること、または音楽の持つ繊細極まりないフィーリングであり面白さを人々が理解しようともしていないことに、だ。楽曲にスネアやキックを加えるだけで、または他の楽曲をマッシュアップするだけで、音楽の聴こえ方なんて何百通りにも聴こえるじゃないか。なのに、その楽しさをなんでみんな理解しようともしないんだ・・・そんな怒りが音楽制作の背景にあるからこそ、彼のトラックは歪なまでにビルドアップされた強固なビート感をその核に据えているものが多いのではないか。

そして2013年の春に、yzoxは彼自身が大切にしている音楽を自らの手で世に放つためのネットレーベルを発足させる。オモイデレーベル(TwitterFacebookTumblrMixcloud)がそれだ。「当レーベルはプロアマ問わずフリーで公開することで今後のアーティスト活動を支援するものです。ステップアップの一つの方法に使っていただけると幸いで す。当レーベルからのリリースではない作品の宣伝告知なども承ります。尚、DJmixのリリース依頼も承っておりますので是非是非ご活用くださいま せ!!!!! ※過去に既に公開していたものも可能です!また当レーベルで発表しても他で発表することは問題ないです!!!! 」レーベルの初期リリース作に添えられていたこんな文句からも、主役はあくまでも音源でありアーティストなのだ、という彼の想いが充分に伝わってくる。オモイデレーベルからはトウキョウ・ラブドールズ(Link1,Link2)のようなオルタナ感を前面に打ち出したロックバンドのリリースも過去にはあったし、MixcloudにアップされるDJミックスのスタイルはも様々ではあるが、基本路線としてはヒップホップ、それもインターネットを音楽活動のメインの現場として選んでいるようなヒップホップが多い。例えば、VOCALOIDを用いたヒップホップ、というコンセプトの「MIKUHOP EP」が、米大手メディアFADERのこちらのエントリーに「jazzy hip-ho- beats」として掲載され大きな話題を呼んだことは2014年の「事件」のひとつであったし、記憶に新しいところでは先日リリースされた東京のトラック・メイカーERIQU(Soundcloud)のEP「Dark Romance」はTRAPの解釈の独自性があまりにも衝撃的な作品であった。

 

オモイデレーベルの主催者として、関わっている人たちへの強い想いから音源の再生数でありDL数を伸ばそうとFacebookやTwitterを使っての告知へと勤しむ「作業」が、結果的にではあるがyzox自身の音楽への方法論に影響を与えているのは確かなことだ。彼の音楽活動はオモイデレーベルの発足後、自身の音楽を彼が届けたいと思う人にだけ届けばそれでよしとするという、彼の言葉を借りるならばより「プライベート」な性格を帯びはじめた。彼はSoundcloudに音源をアップしては、彼が想定するあるリスナーがそれを聴いたまたはDLしたことを確認が出来次第サンクラから消したり、またはTwitterのDMなどで特定のリスナーにのみDLリンクを送ったり・・・というスタンスの、いわばパーソントゥパーソンな音楽活動を精力的に行っていく。そのなかで浮かんだアイデア-仮想のディスコ空間「サッドディスコ」を具現化する-というコンセプトのもと、今年2014年の夏に彼はDJ Sad Disco(Twitter,Soundcloud)名義でのトラック・メイキングをスタートさせる。

コピーライトの関係上、Soundcloudには弾かれることが多いというトラックのなかでも、このSupercellのエディットはその「サッドディスコ」というコンセプトにもっとも近いものに思える。もともとはかせきさいだぁと木暮晋也のインタビュー記事(こちら)にあった「サッドディスコ」という単語に引っかかりを覚えたというyzoxが、インターネット上をサッドディスコ、サッドダンサーで検索してもHITしない、しかしそれが存在することはわかる、それを自分で作る・・・ということからスタートさせたプロジェクトであったとのことだが、彼にとっての「サッドディスコ」の本質とはすべてのパーティーには必ず終わりが来てしまうということに由来する悲しみや悔しさを噛み締めて、だからこそこの瞬間にだけは突き抜けに明るく、どこまでも享楽的なパーティーチューンを!というものなのではないか。個人的にはこのDJ Sad Discoという名義からすぐに連想されるアトランタのDJ Sad Anime(Twitter,Soundcloud)との奇妙な符号というか、それはその名義だけではなく、例えばDJ Sad AnimeがMagic Yume Recordsからリリースしたサマーミックス(リンク)が指向するところにDJ Sad Discoのトラックの方向性は非常に酷似していて、DJ Sad Discoは「Meishi Smile以降」という文脈への彼からのアンサー的なものとして考えるべきなのか?という疑問も捨てきれないでいるのだけれども。どちらにせよ、今年の夏に僕はDJ Sad DiscoのEP「In The Place To Be」をそれこそ浴びるように聴いたし、当ブログでのプレミアという話もあったのだけれども、その時期に僕がプライベートで色々と問題を抱えてしまっていて公開出来ず仕舞いになってしまいました。本当にすいません。

そして、yzoxにとって転機となるであろうトラックが昨日、新進気鋭のレーベルTranspose(Twitter,Blog)よりリリースされた。術の穴(Web)に所属しつつTransposeを主宰するk-over(Twitter,Soundcloud)によるダンス・チューン”ルーパー”を、Voパートを除いてすべて作り直した、どこまでもChillなリミックスだ。

その兆候は以前からあった。彼がSoundcloudにアップするDEMOテイクの数々がTRAPのリズムパターンを組んだだけのものであったり、上物のシンセのコード感を確かめんとしただけに聴こえるものであったり、これまでの彼のトラックと比べるとあまりにも未完成で、楽曲を構築する上での各要素をトラックにて実験して確かめているかのようなものが目立ってきたのはいつからだったか。それらの楽曲からも彼が何かをやろうとしているのは見てとれたのだけれども、それがなにかはわからない、というような。その数々の実験の結実こそがこのリミックス、というわけだ。彼がこのトラックの制作にかけた情熱は過去作の比ではなかったといい、実際寝ずに作業を行った末に朝を迎え、また夜になったら作業を再開してまた朝が来て・・・という過酷な状況にまで自身を追い込んでいたことが、このトラック制作時の彼のTwitterの発言から伺えた。彼がこのリミックスで目指したものはただひとつ、自分の音楽で人の心を動かしたい、というものだ。音楽が人と人を繋ぐ、人の人生を変える、そして救いさえもする・・・「音楽」が彼に与えてきたそんな体験を誰かにもたらすことの出来る楽曲を自分で作る、ということだ。だから一切の妥協を許さず、細部に至るまで何テイクも何テイクも作り直して、それこそたった4小節のベースラインを作成するのにも数時間を費やすほどだったのだ。そのことは、直感と閃きからスタートさせたトラック制作を数時間で終わらせてSoundcloudにアップして、といった彼本来の即効性を重視した音楽的スタンスから考えてみれば異常なことである。かつてyzoxは要約すると以下のようなことを僕に語ってくれたことがある-「自分は本当に不器用な人間で、他人のように言葉を上手く紡ぐことは出来ない、出来ることといったらささやかながら音楽を作ることくらいだ、でもトラックメイカーとしては音楽で語ることこそが何よりも大事なんだ」・・・。このリミックスは彼のどの楽曲よりも雄弁に彼の想いを語ってくれるし、鮮烈な音楽体験をリスナーにもたらしてくれるはずだ。現に、僕はこの曲に救われた。

以下はこのリミックスがまさしく完成した直後に、テンションの高いyzoxとTwitterのDMでやり取りした記録をまとめたもの。あまりにも濃密な内容なのでここに掲載する。

yzox(以下y)「こういうこと(注・朝まで寝ないで作業して、といった制作状況)も自分のためというより、リリースしてくださった方のためでもあるんで」

僕「やっぱり、その辺はご自身でもレーベルを主宰されているってことで、苦労だとか気持ちの部分で想うところがおありなんですね」

y「僕は完全個人レーベルのわりに 手広くやってしまっているので、せめてもの恩返しを何らかの形でしなければと思っています。今回は直接にはそうはなりませ んが。それでも。僕が行動することで 他のレーベルのことも知って頂けたりしますね。うちだけがよければいいってのはないんです。もともと ミュージシャンの発表の機会や なんていうか感想をもらえるチャンスを増やしたいとかそういう気持ちでもやっているので、うちじゃなくてもいいんですよ 音楽を作る人がもっと報われたら それは本望というか・・・・ DJ MIXもそうなんです。」

僕「本当に心が震えますよこれは!!昨晩のyzoxさんのツイート見てて、4小節のベースラインにそこまで気持ち込めてるんだ・・・って、すごく驚いたんです。というか、ものすごくこの曲に感情移入してしまうというか。ちょっと、これはとんでもないです。。」

y「今これからアップするの(注・このエディットです)なんて一時間ですけどね 笑」

僕「ははは笑 そういう器用さみたいなのをずっとyzoxさんの音源に感じていたので、だからこそ、このリミックスにかけた想いの部分って尋常じゃないんだろうなって。ビシビシ来ますよ!本当に鳥肌たちますもんこれ!!」

y「今回 本当にベースを普通につけるとダサくなってしまって 悩んでました かといってまったくないわけにはいかないと。古川さん(注・僕です)もそうだと思うけど あそびでやりましたーってやつでも ダサクはしたくないじゃないですか その線引を今回の曲ではごっと高いレベルにアゲただけっていうかんじかなぁ・・・」

僕「数日前に送っていただいたものから、ここまで来る間の過程みたいなのがすごく生々しいんです!!」

y「ベースは1回前ひいて 削って削って削って これっていうw全部引いたら 本当にダサクて・・・ それで4小節を何度も何度もやってました コードも allopm seiho tohubeats 最近の人が使う コード進行ですよねでも本当に聴かせたいコードは 一番最後の 手の鳴るほうへ の繰り返し のところで それを活かすためのベタなコード進行というか・・・(ベタが悪いわけじゃないですよ もちろん)」

僕「きのう(Twitterで)呟いてらしたRemixers Delightって、Nightmares on Waxのスモーカーズディライトですよねw なんかあの辺の音源にベースラインのヒントがあるのかなあ、と」

y「よく憶えてますねw それもあったんですが 他にもベースは Youtubeでガンガン見てました 例えば 僕が心から好きな曲でMount Kimbie – You Took Your Time (feat. King Krule)(Link) 繰り返しのコードじゃずっとほとんど同じだけど(一部は違うけど)  足さない美学みたいな・・・・ この曲で泣けない人がいるのかなってぐらい エモイ曲 だからこの曲は 今回作る前に イヤになるほど聴きました コード進行って ウワモノが乗った時に威力を発揮するんですよ やっぱり 参考にしたものでは これも  明日へゆけ/ ハナレグミ(YouTube)」

僕「いま送ってくださったやつ聴いてます!これやばい!!」

y「これほんとうに良いですよね マウント・キンビーっていうのかな 即買しちゃいました JUKEって ベースが履いてないのが多くて それは世界的に多くなってきていて だから最初の方のバージョンは シンセSAWがなってるからいいじゃん?それがJUKEなんじゃないのって思って作ってみたという・・・ ちなみに ベースを どんどん細かく削って 三連とかにすると それだけで 単音なのにグルーブが出るのは発見でした ギターとベースでいうなら 普通相互の関係性にあるんですが 今はそういうのは テクノだとダサいのかなって気がしました やってみて。」

僕「やばいです、お話お伺いしててめちゃくちゃ面白いですwこの情報量をアタマが処理できなくなってきてますけどw」

y「そんなそんなwこれ作りながら 誰かの心を撃ち抜けるような そんなにかを探しててて 今は音楽制作もYoutubeやwhosamledと枚挙にいとまがないけど ネットのお陰で 助かる部分もあり。古川さんも この曲の この部分がやばい!とかありますよね それを抽出するのがトラックメーカーなのかなとか。例えばMy Mind’s Eye – Small Faces(YouTube)これを聴いてどこに感動するのか とか でも感動するんですよ確実に tofubeatsは そういうことを とても自覚的に(もしくは露悪的にとってもいいかもしれない) やってますね 悪い意味じゃなく 良い曲の 良い部分を提示するというか。そんなかんじかなw まぁそんあかんじでw でもこれだけは言いたいのは古川さんがここまで気に入ってもらえただけで 作ってよかったです」

僕「なるほどwいまいっぱいいっぱいながらレスさせていただきますと、僕は思いっきり深読みしてこの曲の核ってやっぱりyzoxさんが以前仰ってた怒りの部分じゃないかなって」

y「ああw なんか 無料でも有料でも 音楽を大事にしろよってね。。。マイケル・ジャクソンのエスケープの話題 今誰もしてないですよね?」

・・・ここで残念ながら時間切れになってしまい会話は途切れてしまったのだけれども、この続きやオモイデレーベルのことについてなど彼に聞きたいことは沢山あるので、どこかのタイミングで彼にインタビューを申し込もうと僕は思っている。

 

 

カテゴリー: alternative, chillwave, electronic, trap パーマリンク

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