ドシラソファミレーション by BaaBooFAZ

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BaaBooFAZ(WebTwitterSoundcloud)は大阪・茨木のオルタナティブ・ロック・バンドで、2006年にVo/Gノブ、Bユタカ、Drアサト(現在は”村上亜賢”としてソロで活動している)の3人で結成されたNASHをその母体としている。2008年にはセカンドギタリストとしてタケルを迎え、”僕はピストル”、”ディーゼル”、”NEW SONG BABY”の3曲入りのCD-R「Demo Vol.2」(このタイトルからも「Demo Vol.1」の存在が伺えるが、残念ながら僕は未確認です)をリリース。大阪のClub Mercuryでのライブ録音の作品で、決して音質が良いとはいえない代物なのだが、この盤に閉じ込められた陰鬱かつメタリックなトーンで展開されるサウンドからは、彼らの音楽への(いささか暗いといえる)情熱を感じることができるし、当時の彼らが真に「オルタナティブ」たらんとしていたその意志を十分に伝えてくれるものだ。 また、現在でもライブでの定番ナンバーとなっている”僕はピストル”がこの時点ですでに披露されていることは見逃せない。タケル脱退後の2010年に彼らは”ユキミダイフク”、”DUST”、”CRY BABY”、”僕はピストル”、”BLACK BOX”の5曲入りの「NASH EP」をリリース。彼ら茨木のミュージシャンたちにとって縁の深いD-Studioでのレコーディング、プロデュース/エンジニアは長上鋭司という環境で録音されたこのEPは、「Demo Vol.2」に顕著なライブのテンションの高さをスタジオ・レコーディングで発揮しようと試行錯誤する姿が刻まれた作品だが、残念ながら「Demo Vol.2」でのバンドの勢いは損なわれてしまっている。とはいえ、”ユキミダイフク”でVo/Gノブの「言語によるサイケデリア」とでもいうべき詞世界は、すでにその萌芽を見せている。余談になるが、彼の歌詞に対するスタンスは、自身の情動であり感情の揺れを単語の響きに託す・・・というものがベースだとは思うが、一見出鱈目に思える言葉の羅列が彼の内面の言語体系においては理路整然としたものである、ということを僕は確信している。(このEPのうち3曲は現在でも彼らのSoundcloudで聴ける)「NASH EP」リリース後に彼らはバンド名をBaaBooFAZに改名するも、2010年にはドラマーのアサトが自身のSSWとしてのキャリアを追求するためにバンドを脱退。後任ドラマーを迎えるも、2012年に脱退。BaaBooFAZはそこから約1年半、沈黙を続けることとなる。その間ノブは彼らと同じく茨木のアーティスト、The ムッシュビ♂ト(WebTwitterSoundcloud)の楽曲”FIT”(真に名曲だ!!)に参加して独創的なギターパートを披露したり、ベーシストのユタカは村上亜賢のライブにサポートとして出演したりもしていたが、肝心のBaaBooFAZ自体は停滞したままであった。

彼らに転機が訪れたのは2013年の夏のこと、キーボーディストとしてThe ムッシュビ♂トが、ドラマーとしてK.UMaa’sブラスタルのエイジがそれぞれバンドに加入。BaaBooFAZを新たに再編し、リハーサルを開始する。この2013年の10月に僕は茨木に訪れ、当時ニューアルバム「キラーチューンズ」をリリース前だったThe ムッシュビ♂トの取材を行っているのだが、その際に、BaaBooFAZの面々と村上亜賢が参加してD-Studioで行われたセッションの模様を僕は観覧する機会を得た。セッション、といっても中盤から各人の演奏が異常に熱を持ち始めてスタジオライブの体を成していったあの日の光景を、僕は約1年が経った今でも鮮明に覚えている。村上亜賢がG/Voで、ノブがリードギター、ベースがユタカ、ドラムがエイジという面子で繰り広げられた村上の代表曲”再生の歌”のエレクトリックver.などはあの夜のハイライトのひとつではあったのだけれども、図らずも実現した再結成オリジナルBaaBooFAZーノブ(Vo/G)、ユタカ(B)、村上亜賢(Dr)-にThe ムッシュビ♂ト(Key)を加えた布陣で演奏された”僕はピストル”が壮絶なものだった。

これがそのときの模様。僕が持参したICレコーダーで録音した音源にユタカがマスタリングを施したもので、音質についてはあくまでもそういうものであるということをご理解いただきたい。この楽曲の冒頭で聴けるパートは完全にアドリブらしいのだけれど、例えばノブがコード進行を決めてその場の即興で歌い出し、それに各パートが演奏を合わせていく・・・というような光景がBaaBooFAZのスタジオでは日常的となっているようで、そんなジャムセッションからスタートした”僕はピストル”の暴力的なギターリフ、ノブのDesperateなスクリーム!!を全身に浴びながら、僕は個人的に大好きだった2000年代のキラーパンク、Disco LepersとかVisicousとかHex Dispencersとか、ああいったバンドたちを勝手に思い出したりしてものすごく興奮した(彼らがパンク・ロックに影響を受けた、っていうことはないかと思うのだけれども)。また、この曲でノブはスタジオにてレンタルしたギターを使用していて、本来はサウスポーながら右利き用のギターでもまったく問題なく弾ける(!)という、彼のプレイアビリティに僕は驚かされたものだ。この日のスタジオで体感した彼ら茨木のミュージシャンたちの演奏、またはネットを通して知るものではない彼らの「生」の姿というのは僕にとって本当に衝撃的なもので、彼ら茨木勢のライブは可能な限り足を運んで実際にこの目で見ようと決意したんだ。

そのスタジオでのセッションから約1月後の2013年11月24日、難波Hard Rainにて「キ・カ・ク・ガ・イ」という企画が催され、新生BaaBooFAZの初ライブが行われた。

attachment00企画のトップバッターとしてステージに立った彼らがこの日演奏したのは”Intro”/”ハート踊り”/”ドシラソファミレーション”/”小さな太陽”/”僕はピストル”/”くもり たぶん くもり”の計6曲、約30分。この日会場に詰めかけた観客のなかに「BaaBooFAZ=The ムッシュビ♂トのバンド」というように考えていた人がいたとするならば、ライブ後には認識を改めることになったのではないか。確かに、The ムッシュビ♂トの加入によりサウンドのスケール感が一気に拡がり、彼の弾くキーボードのサウンドがBaaBooFAZに「Pebbles」や「Back From The Grave」などのコンピレーション盤のような60’sガレージ感覚をもたらしていたことは確かではあるが、それよりも、ようやく1年半の停滞期から抜け出して自分たちのバンドを再開出来る!という開放感を全身で表現しているかのような、ノブとユタカが放っていた熱量は尋常なものではなかった。「ノブと一緒に(ライブを)やれるのは1年半振りだから嬉しい」と、ちょっと照れたような穏やかな表情でライブ前に語っていたユタカが、ステージ上ではエイジが叩き出すパワーヒッティングなドラムとともに、過剰なまでにアグレッシブなリズムで観客を煽る。そして、上記したスタジオでも垣間見せていたノブの、いわば「フリースタイル・ロックンローラー」とでもいうべき彼の本質は、アドリブで繰り広げられた歌唱やギターソロで遺憾なく発揮されていた。ギターソロなんかはすべて即興だったようなのだけれども、Fuzzとワウペダルを駆使してサイケデリックなトーンで白光するソロの、抑制されたトーンから一転してエモーションを放出するギタープレイはまるでThin Lizzyのオリジナル・ギタリストEric Bellのようではないか!と僕はひとりで客席で思ったんだけど。後日にノブが語ってくれたところによると、この日のステージではあまりの心地よさにギターを弾きながら寝そうになった(!)らしいのだけれども、それが頷けるくらいに、彼は彼が本来いるべき場所、すなわち「ステージ」に戻ってきたんだ・・・という喜びに溢れていた。そうそう、このことは書いておかないと。この日の会場には迷われレコード主宰の山岡迷子氏が姿を見せていて、僕もご挨拶させていただいたのだけれど。普段自身のネットレーベルを通じて音楽をオンラインで配信している方が、こんな風にして積極的にライブハウスっていう「現場」に足を運んで、新しい音を貪欲にサーチしているっていうことに感銘を受けたんだ。・・・いや、もちろんそんなのは当たり前のことなんだろうけれども。そういう「当たり前」のことを本当に当たり前に積み重ねてきたのが迷われレコーズなのだなと。どちらかといえば、僕は音楽の現場主義とでもいうか、ライブハウスやクラブにしか「音楽」はない!とする向きには否定的だ し、普段インターネットで音楽をDIGすることを日常的に行っている身としてはインターネットにもその「現場」はあると思うのだけれども、ライブハウスやクラブ、レコード・ショップに足を運ばないとわからないことっていうのは確かにあるので。僕はものすごく感化されるものがあった。

バンドは2014年に入ってから、3月には台湾のSkip Skip Ben Ben(My Bloody Valentineが台湾ツアーをした際にオープニングアクトとして指名された逸話でも有名かと思う)との共演も果たし、コンスタントなライブ活動を行い、7月にはD-studioにて観客を招いての公開レコーディングを敢行する。そのときの録音が、彼らの1stEP「それ聞いてDo!」だ。フィジカルとしては彼らの8月1日のライブ(詳細)から販売開始、そしてデジタルでは勢力的に活動を続けるネットレーベル、tanukineiri recordsより8月中にリリースとのこと。その先行トラックとして、EPの冒頭を飾る「ドシラソファミレーション」がtanukineiri recordsのSoundcloudにて公開された。

 

BaaBooFAZのライブではすでにお馴染みのナンバーで、彼らがライブの本数を重ねるたびにその歩みを前へとすすめてきたグルーブがひとつのカタチとして結実したさまを聴くことができる。彼らが今回のEPの配信に際して、メンバーのThe ムッシュビ♂トの主宰するPositive Recordsでも彼らにとって旧知の迷われレコーズでもなく、tanukineiri recordsからのリリースを望んだ経緯というのは、すでに出来上がっているPositive Recordsや迷われレコーズ周辺の「文脈」の外へと飛び込んでいきたいという意志の現れであることは確かだが、tanukineiri recordsのネットレーベルとしてのスタンスに共鳴するものがあったからなのではないか。一枚一枚のリリースに際して本当に丁寧に音源を扱うレーベルだし、アーティストの意向を極力尊重しているように見えるので。ここら辺の事情っていうのは彼らに聞いたわけではないから、まったくもって想像だけで書いているのだけれども。そのtanukineiriのSoundcloudに記された、レーベル側からのアナウンスを全文無断転載しよう。

Positive Records主催のTheムッシュビ♂ト在籍の80年代後期~90年代のJインディーロックスピリットを牽引した音を創り出すロックバンド 「BaaBooFAZ」の一発録りEP音源。「それ聞いてDo! 」。8月よりタヌキネイリレコードよりフリーダウンロードリリースいたします。デビュー作となる今作は、7/6に行われた公開レコーディングにて誕生した 1発録り音源。 Gt.Vo.ノブが力強く、そしてエモーショナルに歌い上げます。エレファントカシマシ、Theピーズ、といった攻撃的だけど優しいロック。男の内面をさ らけだす80後期~90年代の激情型ロックが好きな方は、是非聴いてみてください。

デジタル配信に先駆け CD「それ聞いてDo!」は、8月1日よりライブ会場にて販売開始のこと!今後の彼らから目が話せません

なるほど、たしかに彼らのサウンドはハードコアやニューウェーブのインフルエンスを基盤として独自のサウンドを築いていった80年代後半のバンドブームのころのバンドたちや、NirvanaやSonic Youth、または「Bandwagonesque」あたりのTeenage Fanclubの影響のもとにあった、90年代半ばの日本のインディーなギターバンド群(俗に「下北系」と呼ばれたバンドたち)との共通項を感じさせるものであるし、ノブの資質は「とどめをハデにくれ」~「リハビリ中断」のころのThe ピーズのハルに近いものがあるように思う。音楽的には、この数年USインディーでたしかに起こりつつあるオルタナティブ・ロック回帰・・・というか、一言で言ったら「リバイバル」の気運に、彼ら自身が意識していなくてもアジャストしていくものではないかと思う。正直なところ、僕がいままで目撃してきたBaaBooFAZ、というよりもノブの才気がこのEPですべて発揮されたとは、僕は思わない。・・・のだけれども。

今後BaaBooFAZが注目を浴びるようになった際、彼の個性的なキャラクターというのは間違いなくクローズアップされることになると思う。プライベート での彼は本当にエキセントリックで、その場にいる人たちを笑わせることばかり考えているみたいに、風変わりな発言や行動をして周囲の反応を伺うみたいな、一事が万事そんな風なのだけれども。例えば。僕とふたりきりになったときなんかには、彼は音楽の話だけしかしないんだ。いかに自分が音楽に情熱を傾けているか、音楽に救われてきたか・・・。または、彼が敬愛するという関西のメタルクラスト・バンド(そのバンドの名前を忘れたのが悔やまれる・・・)を僕が知らないと知るや否や、そのバンドのライブ動画をiPhoneで再生して「観てみてくださいよ!」なんて自分のiPhoneを嬉しそうに渡してきて、そのバンドのギタリストが使っている機材を全部揃えたのだけれども同じサウンドは再現出来なかった、結局追い求めるべきものは機材とかじゃなくかったんだ・・・なんてことを延々と熱っぽく語る男で、僕はそんな彼が大好きなんだ。あれはいつだったか、BaaBooFAZが再始動する前のことだったと思うのだけれども、彼は僕にこんなことを語ってくれたことがある。僕は24時間常に音楽を作っていたい、音楽がなければ僕の人生は監獄のなかにいるようなものだ・・・。彼がこの時勢にSNSなどを一切やらない、というのもきっとそういうことなのだと思う。音楽に関わる時間が減ってしまうから。恐らくは、BaaBooFAZの活動が停滞 していた1年半の間、盟友たちのライブに足を運びながらも、彼は客席で唇を噛み締めていたのだと思う。自分の居場所はこちら側ではない、ステージの上であるはずなのに、と。それでも、自分の感情や「想い」をあらん限りに込めた叫びを、誰かに再び届ける日が来ることを。ただただじっと待っていたんだろうなと。音楽に関わっていなければ自分はもう死ぬ!とでも言わんばかりの彼のあの「切迫感」はたしかにこの「それ聞いてDo!」EPからも感じることが出来る。僕はもう、今は僕はそれだけで十分なんだ。彼は近いうちにライブで、それはもしかしたら「音源」でなのかもしれないけれど、彼の持つポテンシャルのすべてをリスナーに叩きつけくれると思うし、僕はその瞬間を目撃したいから彼らのライブにまた足を運ぶんだ。本当に、ただそれだけのことなんだ!

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