Lonely Women by TV Girl part.1

サンディエゴのTV Girl(Twitter,Facebook,Soundcloud,Tumblr)といえば、

この2~3年ネット界隈で非常に人気を博しているバンドであるし、「え?いまさらTV Girl?」と思われるリーダーの方も多いかとは思う。のだけれども。

彼らが発表してきた音源の数々に潜む悪意であったり世間への挑発的なアティチュードの部分だったり・・・というのが。

少なくともこの日本ではまったくクローズアップされないことに、僕は常々不満を覚えていたので。

本日リリースされた新作Lonley Womenに託けて、このエントリーでは2回に分けてTV Girlの簡易なディスコグラフィーの作成を試みつつ、

彼らのそういった部分にスポットライトを当てていけたらと思う。

 

 

TV GirlはDa Bearsに在籍していたTrung Ngoと、

Brad Petering、Brad P and The Son of Sam、Brad P and the Celebrities、The Original Folgers All Starsなど、

様々な名義を用いて自身の楽曲をネットで発表していたBrad Peteringのふたりによって2010年に結成された。

Da Bearsはサンディエゴをベースに活動していたインディー・ポップ・バンドで、

2枚のアルバムをリリースし、サンディエゴ周辺を積極的にサーキットしており、

Trungの他にも現DUDESのRyan Solomonを擁したことで有名である。

(彼らの音源はすべて、彼らのBandcampからフリーDL出来る)

BradがTV Girl結成以前に発表した音源のほとんどすべてがネット上から消されてしまっていて、

かろうじて残っているmyspaceに上げられている楽曲だけではその全貌が見えないとはいえ、

インディーポップやガレージといった音楽と、サンプリングを主体としたオールドスクールなヒップホップとが混然となったそれらは、

まさにTV Girl前夜の熱を帯びた非常に興味深いマテリアルばかりである、とここに記しておこう。

また、Bradはフォトグラファーやデザイナーとしても活動していたようで、

TV Girlの1st EPのジャケットの印象的なアートワークには彼の手がけたヌード・フォトが使われている(ここで彼の作品群が確認できる)

もともとTrungとBradは高校時代のスケーター仲間だったらしく、Youtubeではふたりのスケートの動画が何本もあがっていたりもするので、

興味のある方は検索してみるといいのではないかと。

 

 

2011年の10月、TV Girlはデビュー作となるTV Girl EPを彼らのBandcampにてリリース。


2010~11年に隆盛を極めていたChillwaveの空気感をたっぷりと吸い込んだような、リバーブのかかった音像が特徴的な作品だ。

のちに彼らのKickstarterの特典として出資者に配布された未発表音源集に収録の、

pre-TV Girl期のMuseumやバンド極初期のLow Signalなどの楽曲でのクリーンなサウンドとと比較しても、

この音処理がそのリリース当時の時代性を意識したものであることは明白だ。

今作はPitchforkのレビューを皮切りに、イギリスのBBCのプレイリストにもセレクトされ、

バンドは順風なスタートを切った・・・ように見えたのだが。

EP収録のIf You Want Itがちょっとした騒動を巻き起こすこととなり、

そのことはTV Girlというバンドの活動や音楽的方向性にまで大きな影響を与えることになる。

トッド・ラングレンのHello,It’s Meが大々的に引用/サンプリングされたこの楽曲は、

のちに彼らの音楽性の代名詞になるサンプリング(前述した通り、BradがTV Girl結成以前から追求していたものである)を核としたもので、

あまりにも無邪気なその作風が故に、Hello,It’s Meの原盤権を所有するWarner傘下のRhinoよりクレームが入る。

Rhinoの要求は楽曲を彼らのBandcampやYoutube、またはブログなどのレビューより消去することであったが、

TV GirlはIf You Want It収録のEPのリリースによって金銭を得たものではないと楽曲の使用の正当性を主張し、このクレームを無視している。

(事実、このEPはフリーDLでのリリースであった。現在は彼らのBandcampのストリーミングからはIf You Want Itは消されているが、

EPをDLするとトラック・リストからは消去されていないので、双方の間でこの楽曲に関して何らかの合意に至った、と見るのが妥当であろう)

・・・ただ。

上記のように彼らはHello,It’s Meの著作権関係をクリアにしていなかったのだが。

自身の性生活をショートストーリーとしてサイトにpostし続け、自伝本I Hope  They Serve Beer In Hell(ミス・バーモントや身体障害者との

メイクラブを自慢げに語っている内容らしい。僕は未読です)が3年間ものあいだNY Timesのベストセラー・リストにランクインし映画化もされ、

女性からは大バッシング、男性からは賛同の嵐を巻き起こした作家Tucker Maxのショート・ストーリーの権利を買って歌詞に引用している、

という事実は見逃せない。そういったサイド・ストーリーをアタマの片隅にでも置いて、もう一度この楽曲に耳を傾けたなら、

まったく聴こえ方が違ってくるのではないかと。

 

このHello,It’s Meの騒動と前後して、2011年3月、同郷サンディエゴの当時平均年齢17歳のChillwaveグループDirty Goldと、

お互いの楽曲をカバーし合ったsplitシングルを発表。Dirty GoldのOverboardの軽快なカバーを披露している。

 

そして同年7月、TV Girlは彼らの出世作となるBenny and the Jetts EPを発表する。

まずこのジャケットのアートワークは、60年代のガールグループThe Cakeがテレビに出演した際、メンバーのJeanette Jacobsが

他のメンバーが激しくダンスしながら精一杯口パクするのをよそに、棒立ちかつ無表情で虚空を見つめるような立ち振る舞いで、

視聴者を戦慄させたパフォーマンスの動画のスクリーン・ショットを加工したものである(そのThe Cakeのライブ動画はこちら

このときのJeanetteのパフォーマンスは健康上の理由からだとか、ドラッグによるものだとか諸説粉々であるが、

この一見可愛らしいカバーの裏にそんな寒気のするような物語性を潜ませるあたりに、バンドの偏執狂的な性格が伺えるようではないか。

(注・現在、このアートワークはJacobの友人よりまたまたクレームが入ったとのことで変更されている)

そして、このEPはBob Dylanの70年の名作New Morning収録曲Sign of the Windowの、

これまた露骨なサンプリングが光るBenny and the Jetts(曲のタイトルはエルトン・ジョンのBennie and the Jettsからの流用である)にはじまり、

フランスの80年代の女性アーティストLizzy Mercier Desclouxへのトリビュート・ソングであるという

Trk-3のLizzy Come Back To Life(真に名曲だ!)を挟みながら、

71年にフランスで上演されたサイケデリック・ロック・オペラYamasukiのサントラ盤(Daft PunkのThomas Bangalterの実父Daniel Vangerと

ベルギー人のプロデューサーJean Kluggerが手がけたもので、少年聖歌隊のコーラスや日本人黒帯柔道家?のナレーション、

そして全編に出鱈目な日本語詞がフィーチャーされた怪作である)から、

「すっかりもう4時 2度出来る 2度出来る 明日から」という、意味不明なフレーズがサンプリングされたYour Own Religionまで。

Rhinoとの騒動以降の彼らが目指したのは、1st EPにあったChillwave的なサウンド・プロダクションを一切放棄し、

If You Want It路線をさらに突き進めたような60年代~70年代の音源からのサンプリングを楽曲の主軸としながら

ダンスフロアへと向かったようなポップ・ミュージックであり、

もちろんそこには(主にBradが)親しんできたであろうヒップホップ・カルチャーの影響というのも確かにあったとは思うのだけれども。

(この頃の彼らがレコメンとしてWise Blood、Computer Magic、Dominant LegsやLushlifeなどのアーティストを挙げているのも、

なにかを示唆するようですらある)

それよりも。

このEPにおける彼らの姿は(彼らがたびたび発言しているように)メジャー・レーベルとの契約を諦めつつ、

いわば「著作権」という仮想敵への悪意を楽曲に込めて発信しているかのようで。

痛快極まりないのだ。

(この時期の海外ブログでのインタビューにて、

「誰かにあなた方の曲をカバーしてもらうとしたら、誰にどの曲をやってもらいたいですか?」という質問に対して

「トッド・ラングレンにIf You Want Itをカバーしてもらいたい」と答えたり、他の質問に対してもインタビュアーを煙にまくような回答ばかりをして

インタビュアー/読者を混乱させよう・・・という意図が見え隠れするような、そういった印象を受けるものが多数見受けられることも付け加えておこう)

 

 

このEPから3ヶ月、バンドはGirls Like Meを発表。

Avalanchesとの比較論までも世間に巻き起こした、前作の核と言ってもいいサンプリングをはやくも一切排除し、

簡素なサウンド・プロダクションを展開してみせた、非常に意欲的な作品である。

このサウンド上の変化は、もともとこのシングルがSmall Plates Recordsより7インチでリリースになることが決定していたため、

著作権関係で揉めないように・・・といった内情によるものだったようだが、

結果として彼らのメロディー・メイカーとしての力量が全開となった、インディー・ポップの傑作に仕上がっている。

(余談であるが、僕のとある友人がTwitter上にて彼らに最初の2枚のEPを7インチでリリースする気はないのか、と尋ねたところ

そうしたい思いはあるが権利関係で無理なんだ・・・というリプライがあったことを僕は確認している)

今作に関しては、彼らの地元サンディエゴのメディアSan Diego Readerによる

「Lo-fi bubblegum pop geared for the children of chillwave」という評がもっとも適切であろう。
(part.2につづく)

カテゴリー: chillwave, dream pop, hip hop, indie pop パーマリンク

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