McCallister (Single Version) The Mells

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The Mells(Facebook)はNYのインディー・ポップ、シューゲイズ・バンド。2015年のバンド結成後、翌2016年の1月、初ライブを迎える前に彼彼女たちがリリースしたリハデモ「Mells Memo Demo」がこちら。そのデモ音源を僕は聴いてひとりで盛り上がりに盛り上がってこんなエントリーを書いて、さらにはバンドにコンタクトを取ったりもしたと。ちょっと飛ばし気味に。でも、一昨日Bandcampにアップされたものの一旦は消され、本日Impose Magazineでのこちらの記事にあわせて公開された1stシングル「McCalliser(Single Version)」を前にしているいまだからこそ、胸を張ってこう言えるんだよ。僕は間違ってなかったって。

この曲は先の「Mells Memo Demo」でも披露されていたものだが(注・リリース当初、このデモは4曲入りだったが、現在はストリーミング/ダウンロードともに”Plum Crush”1曲のみの公開となっている)、これが本当に同じ曲なのかと見間違えるかのような出来栄え。完成度。この清らかな音源をして「For fans of Wildhoney,Mercury Girls and Literature」なんて文言がこれからネット上で飛び交うことになりそうな気もするし、このLiterature~Mercury Girlsが構築した文法をそのまま流用したようにも聴こえる楽曲は、それらのバンドのリスナーにはダイレクトに届くものだろうなとも。ただ、ここにはそれ以上に、彼彼女たちがLiterature関連のバンドのイミテーター、フォロワーに留まることなく、これから自分たちの音楽を、巨大な物語をクリエイトしていくんだろうなあという予感・期待感を抱くには十分な完成度の高さを湛えていて、ここからはじまっていくなにかを自分は目撃出来るんだなって、僕は高揚するんだよ。まあ、まだ3分足らずの楽曲がたったの1曲公開されただけなんだけどね。それでも。

いくらかパーソナルな想いを交えるなら、The Mellsが奏でるのは表面張力が果たされるほどにストレスに満ちて、なにか「問題」の類をこれ以上抱えてしまったらマインドが決壊してしまうというような毎日のなかで、僕の背筋をまっすぐに伸ばしてくれる音楽。そうなんだよ。少なくとも僕にとっては、ロック、それを「ポップ・ミュージック」と言い換えてもいいし、もっと大きな括り、「音楽」としてもいいのだけれど、それらを聴く、愛好するということは、とりもなおさず自分の力ではどうにもならない、決して覆らない現実を前にしたときの精一杯のレジスタンスそのものだし、もう自暴自棄になったり呆然としたりするしかないような状況下でも自分自身に誇りを持って生きていくために必要な心の豊かさに手を伸ばすということなんだよ。本当に、僕はこれが欲しかった。こういうのを求めていたんだよ。

 

 

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Oh, My Heart by Shannen Moser

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フィラデルフィアのフォーク/ベッドルーム・ポップ、Shannen Moser(FacebookSoundcloud)が新作「Oh,My Heart」Name Your Priceにて公開。同作のカセットがBald Spot RecordsよりPre-Orderスタート(Link)。

検索したらの内容とさほど変わらない文言で今作のリリースを伝えるニュースサイトがいくつか出てきたし、じゃあこれ以上アレコレと書き綴っても蛇足に過ぎないのでここで終わり・・・っていうのもどうなのか。

ちょっと前から考えていたこと。「ベッドルーム・ポップ」っていう、いつからか頻繁にその名を目にするようになった音楽ジャンルが、Bandcampなどでこれほどまでにその規模を拡大させていった背景には、もちろん録音技術の発達・普及だとか、特別な楽器演奏の技術を習得しなくても音楽制作が出来る環境を比較的安価に構築出来ることになったなどのテクニカルな側面というのは当然あるとして、このカテゴリーがこれといった明確な定義づけをもたないことが近年の隆盛の最大の要因ではないか、と。Urban Dictionaryこの項目によると、ベッドルーム・ポップとは

A genre DIY indie music, bedroom pop is characterized by its lo-fi quality and often contemplative lyrics. Bedroom pop share elements with other indie genres including shoegaze, dream pop, jangle pop, and emo. Guitars and vocals often feature heavy use of reverb or delay.(by Jim Charlotte July 25, 2015)

とある。まあそんなところになるんだろうなと思いつつ、当然過去のポップ・ミュージックでも多数聴かれる自宅録音だとか、90年代のベッドルーム・テクノ、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」やビートルズの「サージャント・ペパーズ」などの多重録音など、そのオリジン、ルーツとして該当しそうなものをそこに加えることはいくらでも出来る。ただ、ある者はフィールド・レコーディングで自身の心象風景をそこに反映させ、またある者はガレージ・バンドで作成したノイズまみれのトラックに素っ頓狂なハーモニーを乗せたり・・・と、ベッドルーム・ポップと一言に言ってもその音楽性は非常に多岐に渡るし、定義づけがなされていないからこそ、その名の下になにをやってもいい、なにをやっても成立するという自由度の高いものとして認識されていて、そこに多くの「ベッドルーム・ポップ」を自認しているミュージシャンたちが魅力を感じたり、夢を見ているのではないだろうか、と。そう、それでいいんだよ。各々が想いを込めて、自分のベッドルームで自分だけの音楽をクリエイトすればいい。孤独に磨き続けたその音楽を、ネットでもなんでもいいからその場所から世に放てばいいんだ。

Shannen Moserは本人の意識としてはフォークまたはSSWなのだろうが、その音楽性は近年のフィラデルフィアのインディー/ベッドルーム・ポップ(Alex Gとか)と確実に同調するものだ。歌とアコースティック・ギターに、時折加えられるエレクトリック・ギター、ベース、キーボード、トランペット、チェロ、パーカッションのみで構成された簡素で素朴な音楽。ここには革新性があるとか、ポップ・ミュージックのネクストを担う可能性を秘めているとか、そういうものではまったくない。これを聴いていて熱い想いになるわけでもないし、生きる活力として機能してくれるわけでもない。それでも、1日の終わりにこの短いアルバムがモニター・スピーカーから流れるベッドルームは、僕に安らぎを与えてくれる。それもけっして仰々しいものではなくて、ホッと一息つけるといった程度のもの。朝になればまた明日がやってきて、目の前に山積みになっているやらなければいけないことや考えなければいけないことに向かっていかなければいけないから。だけれども、その小さな小さな束の間の「安堵感」こそが、日々の生活に埋没して心が摩耗してしまうことに抗う最大の武器なんだ。自分の身辺になにが起きても、マインドをニュートラルに保ち続けるためには絶対に不可欠なものなんだよ。

 

本作「Oh,My Heart」のチェロを担当したjulia petersはソロ名義でSoundcloudで音源を発表している(Link)し、ベースのwyatt oberholzerとギター、トランペットを担当しエンジニアリング~マスタリングを手がけたeric muthは同郷フィラデルフィアのハードコア・バンドGrowerのメンバー(注・「Oh,My Heart」のTrk-5はそこから取ったのかどうかわからないのだけれども“Grower”というタイトル)。eric muthは本作のカセットをリリースするBald Spot Recordsから昨年リリースされたオルタナ/エモ・バンドhorsecopsの「Annie」でもマスタリングを務めていて、このBald Spot Recordsの存在を僕は昨年リリースされたベッドルーム・エモとでもいうべきBuster傑作it’s in my paperback」のカセット・リリースをしていることで知ったのだけれども、この辺の人脈関係からフィラデルフィアのインディーの現在形をチェックしていくのは僕のto doリストに記してあること。そもそも僕は、Shannen Moserの過去作(2014年に「all dogs go to heaven」、2015年に「you shouldnt be doing that」をそれぞれフリーでリリースしている)をまだ聴いてすらいないという体たらくだったりするのだけれども、この「Oh,My Heart」というアルバム、音楽についていまなにかを書きたい、とにかく書きたいという自分の気持ちを優先しているのだから、そんなこと構うもんかって。それもこれから。

彼女は昨年Broken World Mediaが主催するBroken World Fesに出演したり、ニュージャージーのインディー・ロック・フェスFlem Festにラインナップされたりとかしていたようで、注目度はすでに充分に高いみたい。また、地元メディアのSwell Toneがフィラデルフィアのクラーク・パークにて演奏する彼女をシューティングしたフィルムを昨年末に制作していて、そこでは本作のTrk-7”Yr Undertaker”もプレイされているのだけれども、それが大層美しい。

 

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保護中: 2016/12/29

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